「テレワーク、コアタイムなしのスーパーフレックス、時間単位有給休暇制度なども導入していたのですが、組織の生産性を第一に掲げ、専用のシステムで業務の開始時刻や成果を報告する制約の多い制度だったためか、浸透しづらかったのは事実です」

そこで打ち出されたのが、「ゼロベースでの働き方改革&ダイバーシティ推進」だった。翌年の17年には、所定労働時間を20分短縮して1日7時間15分勤務に。基本となる始業時刻も30分前倒しした午前8時15分とし、終業時刻は午後4時30分に変更した。本社では午後7時退館も併せて行い、在館申請しても午後9時には完全退館が鉄則だ。

「仕事を効率化するために、会議ルールの抜本的な見直し(会議改革)も必要でした。また、残業の削減で収入が減る不安を解消するために、先行投資として1万円のベースアップも同時期に行っています」

「どこでもオフィス」を導入したことも大きい。それまでのテレワークのルールを大幅に緩和し、週1回の出社以外は利用制限をなくした。これに併せて軽量PCを全社員に配布、セキュリティー管理の強化も図った。

「直接顔を合わせなければできないという仕事はない、と会社が振り切ったんですね。一見マネジメントが難しいと思われがちですが、PCのログと勤務システムがひもづいていればそれも可能。WEB会議など補う方法はいくらでもあるのですから」

これらの施策で時間生産性の意識が全社員に広がり、働き方の概念が大きく変わった。会社の本気度が伝わったのだと菊地さんは振り返る。

行動を変えることで意識は変わる

長時間労働からの脱却は、女性リーダーを育てるうえでも大事なことだった。長時間労働を前提にしていると「ああまでして管理職になりたくない」「管理職は大変そう」ということになるからだ。

「意識を変えて行動を変えるより、行動を変えてから意識を変えるほうがうまくいくのです。強制的でも早く帰れば体は楽だし、充実した時間が持てます。制度ができたから利用してくださいではなく、行動が変われば制度を活用する人も増えていく。キャリア形成に対しても前向きになれるのだと思います」

18年には、女性の管理職層を増やすべく、将来グループ長になるような人材がどこにどのくらいいるのかを見定める「女性人財の育成委員会」を新設。それと相まって、女性シニアマネージャーへの役員によるメンタープログラムをトライアルで実施した。働き方改革とダイバーシティの取り組みを両輪でやっていく方針だ。