同じ大学のMBAホルダーでも男女で年収差
シカゴ大学でMBAを取得した人たちの年収を追跡した研究があります。シカゴ大学はトップ校の1つですから、そのMBA取得者は誰もが高収入だろうと予想できます。
ところが同じMBA取得者の間でも、収入に約3割の男女差があることがわかりました。大学卒業から5年後、10年後と年数がたつにつれて、その差は広がるのです。在学中の成績の違い等を考慮するとこの差は半分ほどに縮まりますが、依然として格差は残ったままでした。
この研究でわかったのは、男女の賃金差は労働時間の長さと職業選択の違いであるということです。女性の多くは、男性に比べて労働時間が少なく、ハードワークではない仕事に就いている傾向にありました。
猛烈に働ける男性は、それだけ大きな仕事を経験するチャンスが増え、そのことでまた収入の差が開くと考えることもできるでしょう。
働き方改革が賃金格差を埋める可能性
日本も以前はその傾向がありました。「24時間戦える」というフレーズがあったように、無理をしてでも上司やクライアントの要望に応えることが良いとされる風潮が長らくありました。だから、男女の賃金格差はなかなか縮まらなかったのかもしれません。
現在、多くの企業で働き方改革が進んでいます。夕方には退社し、翌日の出勤まではプライベートを大切にするという文化が日本に根付くようになれば、「明日の朝までに」といった無理な指示や注文も少なくなっていくでしょう。労働時間の多さで比較されるのではなく、時間当たりの労働生産性の高さが評価の基準となれば、男女の賃金格差は是正されるという期待もあるのです。
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1994年、日本銀行入行、金融研究所にて経済分析を担当。一橋大学経済研究所助教授、同准教授、東京大学社会科学研究所准教授を経て、2011年4月より早稲田大学教育・総合科学学術院准教授、14年4月より現職。専門分野は労働経済学、応用ミクロ経済学。