1月11日、台湾の有権者は中国共産党政府と一線を画す蔡英文氏を総統に選んだ。日系企業の台湾代表や台湾企業の顧問を務める藤重太氏は「台湾独立派の人たちは、日本が『新冷戦』で米中のどちらを選ぶのかを注目している。どちらにもつかない“コウモリ外交”を続けるのはもう無理だ」と指摘する――。
写真=EPA/時事通信フォト
1月11日の総統選挙で、中国共産党政府と一線を画す現職の蔡英文氏が再選されたことを喜ぶ支持者たち(2020年1月11日、台北)

台湾で台頭し始めた「独立派第三勢力」の新興政党

年明け早々1月11日に行われた台湾総統選挙は、蔡英文ツァイ・インウェン総統が過去最高の817万票を獲得して再選された(投票率74.9%)。同時に行われた立法委員選挙でも、民進党が単独過半数を維持した。

今回の立法委員選挙では、与党の民進党や野党第一党の国民党とは異なる、独立派の「第三勢力」が生まれるかどうかにも注目していた。そんな中で新たに1議席を獲得したのが、昨年12月21日、高雄で「光復高雄」「(親中派の)韓国瑜ハン・グオ・ユー市長の罷免を求めるデモ」を主催し、50万人を集めた台湾基進党だ。

同党の党首は、陳奕齊チェン・イー・チー氏(2019年7月9日付『香港独立運動の父「一番心配しているのは日本」』参照)である。陳氏は「台湾の『香港独立運動の父』」とも称され、1997年の香港中国返還当時から香港独立派と交流を持つ。香港で不当逮捕された香港民族党の陳浩天チャン・ホーティン(アンディ・チャン)党首とは長年の盟友であり、昨年9月にはドイツで周庭チョウ・ティン(アグネス・チョウ)氏とも意見交換をしている。今や彼は台湾だけでなく、香港/アジアの反共産主義のリーダーの一人と目されている。

その陳氏に、今回の台湾総統選挙の意味、そして習近平氏の国賓来日について、再度意見を求めた。

「今回の総統選挙を、中国共産党は2020年11月3日のアメリカ大統領選挙の前哨戦と考えていた」と陳氏は語る。「2018年の高雄市長選挙で韓国瑜が当選したことで、中国共産党は今回の総統選挙での勝算を高く見積もり、一気に香港独立運動の制圧にも乗り出した。国民党の韓氏が総裁選で勝てば、アメリカのパンダハガー(親中派、中国代理人)を使って一気に反トランプ攻勢をかける予定だったのだろう」(陳氏)。

しかし、香港における民衆の反発は予想をはるかに超え、逆に中国共産党の凶暴性を世界に露見させる結果となった。「中国とともに経済発展を」という甘い蜜に飛びつくことがどういう結果を呼ぶかが、明確に実証されたのだ。