年代別・症状別、「冷え」の対処法を知ろう

【タイプ別:お腹が冷える原因と対処法】

東洋医学では冬はカラダが冷える時期で、カラダを温めることが必要とされています。特に、お腹の周りには大切な臓器が集中しているため、お腹を温めることで内臓機能を高め、全身の熱産生を上げるようにしましょう。なお、冷えといっても、年代により冷え方が大きく異なります。大まかには20~30代はストレス中心のストレス冷えですが、40~50代は内臓機能の低下による内臓冷え、さらに60代以降は筋肉量の低下に伴う老化冷えです。これは年代よりも個人のライフスタイルに依存しているため、自分のタイプを知ることが大切です。

一生懸命頑張りすぎている頑張り屋さんタイプの人は、寒さやストレスで交感神経が亢進こうしんしているため、手足の末梢まっしょう血管が収縮することで血流が中心に集まり、冷えを起こしていると思われます。対処法は、手足を温め、全身の循環を良くすること。まずは、手足の温浴を行ってみましょう。温浴は、洗面器(両手首や足首まで十分に入るもの)に、普通の入浴温度よりやや熱めのお湯(40~42度)を用意し、10~15分程、手または足を浸します。気持ちが落ち込みやすい場合やストレスが強い場合は、ラベンダーや柑橘系のアロマエッセンスオイルを、お湯に入れることも効果的です。また、時間がないときは手首周辺や足首周辺を温めるためのリストバンドやレッグウォーマーなどを利用するのも有効です。

生活リズムの乱れが原因の生活習慣タイプの人は、冷たいものやカラダを冷やすものを食べすぎることで、内臓の冷えや内臓機能の低下が引き起こされています。そのため、内側からカラダを温める食習慣が大切となります。

これまでは、カラダを温めるには冬に旬を迎える根菜類や色の濃いものを紹介してきましたが、今回は飲み物について考えてみます。まず、ホットココアは、ココアに含まれている「テオブロミン」という成分が、手足の末梢血管を広げる働きがあります。また、紅茶やほうじ茶は、茶葉を発酵させてつくられている発酵食品でもあるため、飲むことでお腹の調子を整え、内臓機能を回復する働きがあります。なお、紅茶の中にはカラダを冷やすカフェインを多く含むものがあるため、注意が必要です。甘酒や味噌みそ汁もこうじや味噌などの発酵食品を利用していることから、飲み物ではありませんがカラダを温める作用があります。

年齢による加齢タイプは、全身の筋肉量が低下しており、熱産生能力が低下しています。運動で筋肉量を増やし、熱産生をアップさせることが大切です。

腰やお腹の筋肉が弱っているため、腰周りだけでなく肩回りの筋肉も動かしましょう(図表2)。特に肩甲骨の周りには褐色脂肪細胞と呼ばれる脂肪を燃焼し、熱を産生する筋肉が存在しています。肩や腰を回して、熱産生を促進しましょう。なお、いずれの運動も1セット10回程度とし、合計1日3セット程行います。

肩回し
①肩回し:両手を肩に当て、ヒジを大回すように大きく回す。前回し・後ろ回しを交互に行う
腰回し
②腰回し:腰に手を当て、右回し、左回しを交互に行う。

なお、自分のカラダのタイプに関しては、カラダの状態を入れるだけで簡単にわかる無料アプリYOMOGIを利用すると便利です。月に1回(毎月10日まで)入力すると、あなたに合ったその月の養生法が送られてきます。

小寒は冬の寒さが厳しい時期です。しかし、カラダの冷えは外気温の影響だけでなく、内臓の冷えが関係している可能性もあります。まずは食生活を整え、お腹の健康を保つことで、カラダの中から温めてみましょう。

「小寒の特徴」

●心身の症状
カラダ:カラダ(下腹部・下半身)が冷えやすい
ココロ:やる気や気力がない、億劫に感じる

●季節に多い症状
お腹・下半身の冷え

●心身の養生法
ツメもみ、手足の運動、お腹・背中・足裏のお灸

●食養生に効く食材
豚肉・春菊

●ツボ
照海しょうかい

写真=iStock.com

伊藤 和憲(いとう・かずのり)
明治国際医療大学大学院/養生学寄付講座教授

鍼灸学医学博士・全日本鍼灸学会理事。同大学附属鍼灸センター長。トリガーポイント鍼治療の第一人者であり、慢性痛の緩和治療に精通。現代女性のための、東洋医学に基づく心身のセルフケアも指導している。