良くも悪くも直球勝負だった新人時代
職場の上司や同僚など人間関係の「壁」にぶつかったとき、自分ならどうするだろう? 真正面からその相手と向き合うか、それとも避けて逃れようとするか——。
「私はどうしても真正面から向き合ってしまう。よく先輩から、『おまえは直球しか投げられない』と言われていましたね(笑)」
実は部下にもそう見られていると、人事チーム長の本山さんは朗らかにいう。失敗経験も「七転び」どころか数々あって……と振り返る。そのひとつが、入社2年目に異動したケーブルテレビ事業部でのこと。住友商事の出資先であるケーブルテレビ会社への営業支援や商品販売を手がける部署だった。
「今でこそケーブルテレビはこんなに市民権を得ているけれど、当時は言葉も知られておらず、地上波が強い日本では根付くはずがないと見られていました。そこでどうやって売り込んでいくのか、ビジネスとしては相当厳しかったのです。女性だから大変ということではなく、皆が新しいことをやらなければいけなかった。それだけに誰の意見でも良いものは取り入れられ、いい意味で実力主義の現場でした」
信頼関係を築くべく相手の強みと弱みを分析
住友商事へ入社した1991年当時、総合職の同期134人中に女性は2人しかいなかった。メディアに関心のあった本山さんは、女性初の営業職に抜擢される。ケーブルテレビ事業部マーケティングチームは立ち上げたばかりのチームで、販売拡大へと意欲は高まっていた。
だが、その矢先、出資先ではないケーブルテレビ会社(当時の業界最大手)への販売をめぐり、トラブルが生じる。その際、上司が先方に詫びていた電話が苦くよみがえる。
「上司は大きな声であやまっていて、私が『一緒に行かせてください!』と頼んだのですが、結局、謝罪訪問には同席させてもらえなかったんです。この上司に自分を認めさせたいと、そんな気持ちが以降の仕事でピンチの際にも向き合う原動力になったように思います」
自分で責任を取りたい、謝罪したいという思いが強かった本山さんにとっては悔しい出来事だったが、そこで自分に何ができるかを考えた。まず相手の強みと弱みを知ることが必要。彼はアイデアマンで突破力もあるが、仕事への厳しい姿勢ゆえに敵をつくりやすい人だった。本山さんは上司の突破力をきちんとサポートし、周りの人たちとの軋轢をカバーする一方で、伝えるべきことは伝えていく。そうしてタッグを組んでいくうちに認められ、確かな信頼関係が育まれていった。