202030の問題点とは
[JUMP]
ステップでは、202030の正当性を論じましたが、もちろんこの政策には問題点もあります。家事や育児などの負担が女性にわりふられたまま働くように要請すると、女性が二重の負担を背負うことになって大変になるというのは、安倍政権の女性活躍政策についてよくなされる批判です。いきなり女性管理職を30%にするといわれても「間に合わない」という声もあります(『朝日新聞』2015.2.22)。
もうひとつの問題点は「ポジティブ・アクションは憲法14条に定められた『平等原則』に反するのではないか」という議論に決着がついていないという点です。「平等原則」とは前述の「EQUALITY(形式的平等)」のことであり、「EQUITY(実質的平等)」までは含まれていないのではないかということです。実際にフランスやイタリアでは、ポジティブ・アクションにたいして違憲判決が出たこともあり、両国とも憲法改正にふみきることになりました。辻村みよ子は、形式的平等を原則として実質的平等が例外的に実現可能であるというのが通説であるとし、ポジティブ・アクション導入のさいにはその「例外措置」を正当化する法的根拠が必要であると述べています(辻村 2011)。日本における法的根拠は、男女共同参画社会基本法と男女雇用機会均等法に認められるとされています。
このような批判にどのように応えていくのか、どのように憲法を解釈し法的根拠を見出していくのかが、日本における今後のポジティブ・アクションを考えるさいの課題となるでしょう。(井戸)
▼辻村みよ子『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』岩波書店、2011年
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