1年間の無給生活

2015年11月、道村さんは子ども向けオンライン英会話サービス「GLOBAL CROWN(グローバルクラウン)」をローンチ。孤独と不安を乗り越えてようやく夢をかなえたわけだが、すぐにビジネスの厳しさを知ることになる。サービス開始はゴールではなく、スタートラインにすぎなかった。

まだ知名度がないこともあり、会員登録は1日に1件あるかないか。最初に調達した資金は、スタッフへの給与であっという間に底をついた。そこで道村さんは自分をいったん無給にし、その分をすべて宣伝費につぎ込む。効果が現れるまで約1年、貯金を崩しながら食いつなぐ生活が続いた。

この間、精神的な支えになってくれたのは夫だったという。思い通りにならないつらさから救ってくれたほか、一貫して応援する姿勢をとり続けてくれたおかげで「安心して仕事に集中できた」と道村さん。心強い味方を得て、無給生活に入ってから半年後には徐々に宣伝の効果が表れ始めたが、事業の安定にはまだほど遠かった。

「夏休みは生徒が増えない」意外な盲点

「2016年の6月ごろかな。生徒さんが増え始めて喜んでいたら、7月に入って新規登録がピタッと止まってしまいました。夏休み時期って、習い事を始める家庭がほとんどないんですよ。しまった、と思った時にはまた資金がなくなりかけていました」

資金ショート寸前の大ピンチだったが、資金繰りに駆け回って何とか立て直しに成功。事業は首の皮1枚でつながった。この時も苦しかったものの、ローンチ前に比べたらつらさは少なかったという。ハグカムにはすでにCTO(最高技術責任者)をはじめ頼れるメンバーたちがいて、手が回らない部分を補うと同時に、よき相談相手になってくれた。「もう1人じゃない」という安心感は、さぞ大きな支えになったに違いない。