人材と費用をつぎ込んだキャンペーンで大失敗
今、ハグカムはアルバイトを含めて10人ほどになった。講師は海外在住の人も含めて累計800人以上。生徒数も増えているそうで、はたから見ると順調のようだが、道村さんは「まだスムーズじゃないんですよ」と笑う。
「中国ではオンラインでの習い事がとてもはやっていますが、日本ではまだオフラインの教室が根強いですね。当初の予想より伸びが遅くて、この先、事業を成長させるにはどうしたらいいのか、メンバーと相談しているところです」
そこで出たアイデアが、GLOBAL CROWNのサービスを学童保育や塾などの法人にも提供すること。家庭向けのサービスはこれまで通り維持しつつ、法人にも販路を広げることで事業拡大を図る。すでに数件の契約がとれているそうだが、「年内にあと数件とりたい」と自らアポ電に精を出す。
もちろん断られることもあるが、挑戦してみなければ何も始まらない。これまでも、何度もトライアル&エラーを繰り返してきた。人材と費用をつぎ込んで打ったキャンペーンが、反応ゼロに終わったことも1度や2度ではない。心が折れそうな出来事にも、なぜそれほどタフに立ち向かえるのだろうか。
忙しい毎日こそ、理想の生活
「この事業には価値があると信じているから。ピンチの時も、『子どもの好奇心を育む』というビジョンを変える気はまったくありませんでした。私の原動力は、ビジョンを実現したいという思いなんです。心から好きな事業だからこそ、悩み抜けるし苦労もできるのかなと思います」
プライベートでは2歳の女の子のママ。若い頃から、働きながら子育てをする生活に憧れていたそうで、両立の忙しさも苦にならない様子だ。夫と家事育児を分担し、互いのスケジュールを調整しながら両立する日々。時間の余裕はないだろうが、道村さんは「この忙しい毎日こそ理想の生活」とうれしそうだ。
今後の夢は、ハグカムを総合的な教育プラットフォームに育てていくこと。英会話だけでなく、恐竜や乗り物、職業体験など、子どもの興味にすぐ応えられるよう、幅広いオンライン教室と質の高い教師をそろえていきたいという。こうした事業は、在宅ワークや副業を望む人、専門知識があるのにそれを生かす場がない人への機会提供にもつながる。道村さんの事業は、子どもの好奇心だけでなく、大人の意欲も刺激してくれるものになっていきそうだ。
構成=辻村 洋子
明治大学商学部卒業後、サイバーエージェント入社。子会社経営や新規事業開発などに従事したのち退社し、2015年に子ども向けの教育事業を行う「ハグカム」を設立。子ども向けオンライン英会話サービス「GLOBAL CROWN(グローバルクラウン)」を中心に、好奇心を育む教育を目指している。1女の母。