5.鉄道会社のビジネスモデルの問題も

通勤ラッシュの緩和に並々ならぬ努力をしている鉄道事業者もありますが、一方で減便や減車などラッシュに追い討ちをかけるケースも散見されます。

乗客の多くを立たせた状態でないと維持できない、鉄道会社のビジネスモデルにも問題ありです。全車指定席の通勤ライナーなど高付加価値な着席サービスの展開、あるいは鉄道輸送事業外のサービスの収入を増やすことで、輸送力の維持や増強に投資する。そのような、鉄道事業者側のビジネスモデル改革にも期待したいところです。

働き方改革の原点は「仕事した感」を疑うこと

働き方改革とは、単なる労働時間の削減や短縮ではなく、生産性やモチベーションの足かせとなる「仕事した感」「仕事ごっこ」を正しく疑うところからはじまります。

生産性が高い状態とは、究極をいえば、個人個人さらにはチームなどの組織単位で働き方の「勝ちパターン」を実践できている状態。すなわち、本業や本来価値の創出にフルコミット(集中)して成果を出せる状態をいいます。満員電車の通勤とは、まさに「勝ちパターン」を阻害する「仕事した感」「仕事ごっこ」の代表例。

「皆やっているから」「当たり前だから」

この思考停止はそろそろオシマイ。みなさんの職場単位で、組織の、あるいは個人の本当の価値とは何かを正しく議論し、気合・根性ではなく仕掛けと仕組みで正しく「勝ちパターン」を実現できる働き方に変えていってください。さもないと、日本の生産性はいつまでたっても上がりません。

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沢渡 あまね(さわたり・あまね)
作家/ワークスタイル&組織開発専門家

1975年生まれ。あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/浜松ワークスタイルLab所長/国内大手企業人事部門顧問ほか。「組織変革Lab」主宰、DX白書2023有識者委員など。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『問題地図』シリーズ(技術評論社)をはじめ、『新時代を生き抜く越境思考』(同社)、『職場の科学』(文藝春秋)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『仕事は職場が9割 働くことがラクになる20のヒント』(扶桑社)など著書多数。