ワークマンがインフルエンサーを活用した理由

「でも、もともと作業着や作業用品の専門店(ワークマン)が、なぜSNSやインフルエンサーを活用したの?」と、イメージギャップを感じる人もいるかもしれません。

ですが、マーケティングで有名な「STP分析」と「4P分析」からワークマンプラスを捉えると、「なるほど」と納得していただけると思います。簡単にご説明しますね。

「STP分析」は、マーケティング界の権威、フィリップ・コトラーが提唱した基礎的なフレームワークです。具体的には、1)市場の細分化「Segmentation(セグメンテーション)」に基づき、2)その市場のうち、どの顧客を狙うか「Targeting(ターゲティング)」、3)その顧客に響く、自社の強みは何か「Positioning(ポジショニング)」を考えていくのが、STP分析の手法とされています。

ワークマンプラスの場合、STPの3つは、初めからある程度ハッキリしていたはず。すなわち、Sはスポーツやアウトドア市場、Tは同市場を好む男女、そしてPは作業服の分野で培った、防水や防寒、耐久性や着心地の良さ(軽さ)、そしてアウトドア商品としては破格の値頃感などでしょう。

最後の課題・プロモーションをどうするか

他方の「4P分析」は、マーケティング学者・マッカーシーが1960年に提唱し、先のコトラーらが進んで利用する有名な分類です。

4つのPは、「Product(プロダクト=商品)」「Price(プライス=価格)」「Place(プレイス=流通・チャネル)」「Promotion(プロモーション=広告・販売促進)」の略で、通常は先のSTP分析で、自社が狙う市場やターゲット等を練ったのち、4P分析で、具体的な製品や価格、販路や販促を検討する企業が多いようです。

ワークマンプラスの場合、この4Pの、プロダクト(製品)とプライス(価格)については、「従来のワークマン製品の一部を抽出する」「価格も維持する」と決まった時点で、それ以上の迷いはなかったと思われます。

プレイス(流通)も、一般の男女は従来の作業服の店にほとんど来ないはずなので、「ネット通販か、もしくは別業態の店舗で売るしかないな」と発想しやすいでしょう。

問題は、最後のP、すなわち「プロモーション(販売促進)」です。従来とはまったく違う顧客に向けて、新たな店舗で商品を展開するわけですから、当然、既存のお客さまにだけ情報を発信していては、広がりませんよね。

STPと4Pで考える施策立案