発見のきっかけは、ネットの呟き

そこで、ワークマンのスタッフが調査したところ、作業服が持つイージスの機能性を活かして、スポーツやアウトドアシーンで着用する一般の男女が増えていたそうです。

「発見のきっかけは、SNSやブログ上での呟きでした」と丸田さん。

具体的には、「バイク用に着ると、温かい」「アウトドアで着ても、オシャレ」「(音楽系の)フェスの雨対策に使える」など、作業服ユーザーとはまったく違った、一般の男女による口コミが拡散されていることが分かったそうです。

前回、「プチッと鍋」(エバラ食品)の回(「おひとりさま5割“大独身時代”に売れるモノは」)でもお話ししましたが、このとき「このマーケット(ワークマンの場合、一般客や女性客)にも、需要があるのではないか」と改めて顧客を掘り起こしたからこそ、それまで顕在化していなかった新たなニーズを確信できたのでしょう。

コスパだけではない成功の秘密

そのころからPB開発に力を入れ始めたワークマンは、18年9月、「ららぽーと立川」に、アウトドア・スポーツ専門店「ワークマンプラス」を初オープン。1700アイテムにも上る既存商品の中から、一般の男女が使える320アイテムのみを店に並べました。

ワークマンプラスの店舗

そう、少し意外ですが、実はワークマンは「ワークマンプラス」専用の商品は、開発していません。多少語弊はありますが、あくまでも作業着のワークマンが取り扱う商品の一部を、「見せ方」を変えて、別業態の店舗で売り出しただけ。

しかも、ワークマンは定価販売が原則で、値引きをしません。PB商品も、色や柄の多少のマイナーチェンジはあるものの、大枠のデザインは5年間継続して販売するのが通例。ワークマンプラスでも、このやり方は変えていないそうです。

にもかかわらず、なぜワークマンプラスは、ここまで話題を呼んだのか。一部には、「価格の安さやコスパ(コストパフォーマンス)の良さが、人気の秘密」とする専門家もいますが、私はそれだけではないと確信しています。

それは先ほど触れたとおり、ワークマンプラスが地道な「インフルエンサー戦略」を続けてきたからです。