政府の方針も追い風だ。働き方改革の進展で長時間労働が是正されると、最大のネックだった勉強時間の確保がしやすくなる。費用面では数百万円を超える場合もあるが、ローンや奨学金のほか、厚生労働省の「専門実践教育訓練給付金」が活用できる。雇用保険の被保険者を対象に、専門職大学院など厚生労働大臣が指定する教育訓練の講座を受け、要件を満たせば費用の最大7割(最長3年間の期間で上限額168万円)が支給される制度だ。離職中も条件を満たせば適用されるので、子育てや介護などで仕事を離れている場合の復職にも利用できる。
経験者が感じるメリットは学位や専門知識だけではなく、学内の人的ネットワークも大きいようだ。社会人大学院の場合、同じ教室で学ぶ学生の経歴や専門領域、役職などが多様で、職場では出会えない人たちと知り合える。授業で議論を重ね、課題などで協力するうちに深いつながりが生まれる。向学心が強く、考えや能力、学びを通して知る仲間の信頼性は高く、その後のキャリアで助け合える貴重な社外ネットワークにもなりうるだろう。
大人の学び直しは、大量のインプットを課して、脳を鍛える好機だ。それは人生の後半戦を乗り切るビジネス戦略であるともいえる。
MBAは異動にも強いことをつくづく実感。先々のどんなオファーにも前向きに挑戦できます
▼MBA 通学中
学び直しの1つのきっかけは子育てが一段落したこと。人それぞれですが、MBAは若すぎると実務経験に乏しく自分事として捉えられないと思います。私のタイミングはキャリア的にも「40代の今」でした。当初から実務で培った経験を学問的に整理したいという気持ちから人事を学びたかった。中央大学ビジネススクール(以下CBSという)にはMBAプログラムの中に人的資源管理のゼミがあったので、入学を決めました。採用や人材育成など、人事の専門理論などに加え、経営全般も学べるため、会社の戦略に合う適切な分析や提案ができるようになる点で、正解だったと思っています。土日開講も選んだ理由の1つですね。会社からのアクセスの良さも重要。2年も働きながら通うのは大変ですから。
人事から新規事業戦略部門に。MBAの学びを実践で活用
大学院2年目の19年、人事から新規事業戦略部門に部長として異動になり、新しい仕事を任されることに。幸いMBAでは事業戦略、マーケティング、ファイナンスなど経営に必要なことが学べます。財務諸表が苦手だったのですが、授業で数字からストーリーを読み取る経営分析のスキルを学び、苦手意識がなくなりました。経験で足りないことは知識でカバーすることで、仕事に幅ができ、業務に役立ちました。MBAホルダーは異動にも強い、これは実感です。先々どんなオファーがあっても、前向きに挑戦できる強みになります。