「仕事内容や年収に具体的な目標があり、それを叶えるためにMBAを取得」――。一見、転職に有利に働きそうですが、35歳以上の転職事情に詳しい黒田真行さんは「資格を取得しただけでは、それが有利になるとは限らない」と語ります。なぜなのでしょうか──。
大学院の研究や教育の知識
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◆今回のお悩み
証券会社の人事戦略部門でマネジャーを務めています。将来は海外取引や戦略企画にも関わりたく、年収も現在の700万円からもっとアップさせたいと思っています。そのためにはより専門的な知識が必要と考え、社会人大学院に通ってMBAを取得しました。
ただ、今の会社で働き続けてもキャリアアップや年収アップには時間がかかりそうなので、もっと活躍できる企業への転職を考えています。MBAを強みに、年収1000万円を条件に探すつもりです。転職を成功させるため、また年収交渉のためのアドバイスがありましたらお願いします。(43歳・証券会社勤務)

「高年収希望のMBA取得者」にどんな需要があるか

勉強熱心で成長意欲が高く、仕事内容や収入に対しても明確な目標をお持ちの女性のようです。40代前半でマネジャーとしての実務経験も積んでいるため、転職市場では人事や経営企画の即戦力スペシャリストとして評価される可能性は高いのではないでしょうか。

ただ、いきなり年収1000万円へのジャンプアップを目指すのは難度が高いかもしれません。社会人大学院でお金をかけて勉強したわけですから、それに値する収入を望む気持ちもわかりますが、現在の転職市場で「年収1000万円を希望するMBA取得者」の需要がどんな業界やポジションでありそうか、まずはそれをリサーチしてみてはどうでしょうか。

確かにMBAは難関資格のひとつです。その過程で鍛えた戦略的思考やケーススタディーは実戦で役立つことも多いと思います。ただ、会計士資格や外国語のスキルなどとは違い、MBAを持っていないと実務ができないという種類の仕事はそう多くはありません。転職先に対して学習意欲や継続的努力ができることを証明することはできても、成果とリニアに連動することを証明するのは難しいと思われます。

採用側が選考で重視するのは「入社後にどれだけ活躍してくれるか」です。これが最優先条件であり、それを推し測るために経験に注目するのです。資格がなければできない仕事以外では、資格の有無は、経験を超えて評価されることは少ないと言えます。

そう考えると、MBA取得を武器にして年収を交渉しようとしても、スムーズに転職活動が進む保証はありません。相手の真のニーズをつかまず、こちら側のアピールが空回りしてしまうと、会話が噛み合わずに不採用という結果になってしまう可能性もあるでしょう。