まずは「需要」を精査する

繰り返しになりますが、転職活動で最初に重要なことは、自分の経験やスキルにどんな需要があるかを精査することです。冒頭で言った通り、ご相談いただいた方は、経験してこられた分野の即戦力スペシャリストと見なされるでしょうから、需要は必ずあるはずです。

そうして需要のありそうな企業が見つかったら、「ここだけは譲れない」という部分だけを条件にして検討し、その後に年収や職場環境などで優先順位をつけていってください。初めから「資格×仕事内容×年収」を抱き合わせの条件にして探すと、応募したい会社が1社も見つからず、転職そのものをあきらめざるを得ないということにもなりかねません。

ご相談いただいた方が希望するような、海外取引や戦略企画の業務がある企業は実際に存在しています。もし、選ぶ条件を仕事内容だけに絞ってもいいのなら、そうした企業の需要を調べ、そこに対してアピールできるよう準備するといいでしょう。

調べた結果、MBAよりTOEICのスコアのほうが重要だとわかって、「せっかく勉強したのに」とがっかりするかもしれません。でも、その仕事で必要とされるスキルが事前に把握できれば、準備すべきこともおのずと決まってくるでしょう。

条件が多いほど転職先が見つかりにくい

目指す転職先があるのなら、そこに雇われるために必要なものを身につければいいのです。この方は学習意欲も高いようなので、こうしたハードルも乗り越えられるのではないでしょうか。

大事なのは、需要の有無を無視して条件を設定しないこと。自分の中での条件が多ければ多いほど、転職先が見つかる可能性は小さくなっていきます。最近は「仕事内容×休みの多さ」など、働き方を条件にする人も少なくありませんが、労働条件にこだわり過ぎて応募する先がないという方もおられます。

転職を思い立ったら、実際の活動を始める前にまず需要の確認を。そして候補となる企業が見つかったら、自分をその企業の需要に合わせていく努力と、入社後に何ができるかを伝える努力を怠らないよう心がけてほしいと思います。

構成=辻村洋子

黒田 真行(くろだ・まさゆき)
転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役

1965年兵庫県生まれ、関西大学法学部卒業。1988年、リクルート入社。以降、30年以上転職サービスの企画・開発の業務に関わり、「リクナビNEXT」編集長、「リクルートエージェント」HRプラットフォーム事業部部長、「リクルートメディカルキャリア」取締役などを歴任。2014年、リクルートを退職し、ミドル・シニア世代に特化した転職支援と、企業向け採用支援を手掛けるルーセントドアーズを設立。30年以上にわたって「人と仕事」が出会う転職市場に関わり続け、独立後は特に数多くのミドル世代のキャリア相談を受けている。著書に『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』(クロスメディア・パブリッシング)、『35歳からの後悔しない転職ノート』(大和書房)など。