苦痛のないパンプスはないのか

今年(2019年)「#Kutoo」というキーワードが話題となりました。「職場で女性がヒールやパンプスを履くことを強制する風習をなくしたい」という趣旨で、提唱したのはグラビアアイドルでライターの石川優実さん。まずはSNSで発信し、賛同した1万8800人分の署名を厚生労働省に提出しました。「#Kutoo」は「苦痛」と「#MeToo」(ミートゥー。私も)を掛け合わせた言葉で、「女性を靴の痛みから解放しよう」という支持も広がっています。

一方で「業務上必要な場合もある」という声もあります。例えば、取材先のアパレルショップは、「このブランドは、5センチ以上のヒールが最も映える」がモットーで、販売スタッフの女性も、高いヒールの靴や厚底サンダルを履いて接客していました。

事務職でも「内勤日はともかく、取引先へのプレゼンではヒールやパンプスを履く。服も黒をベースにしたシックな装いに変えます」(32歳の女性会社員)という声も聞きました。

難しい問題ですが、履いても痛くないパンプスを開発したメーカーがあります。

走れるセミオーダーのパンプス

セミオーダーメイドのパンプス「KiBERA」(キビラ)というブランドです。足型測定器を使って自分の足を計測したうえでのセミオーダーで、価格は1足9900円(+税)から揃えています。運営会社の経営者は野村證券→ユニクロ出身。そうした話題性もありメディア露出も増えています。

キビラのイベントでは、ランニングマシン上をパンプスで走る体験も行った。

先日、一般客として店舗を見ました。よく見かけるようなシューズショップですが、展示フロアの別室の一角に「3D足型計測器」が置かれていたのが印象的でした。後日、広報関係者に聞くと、イベント実施時には「走っても痛くないか」を試すために、セミオーダーした靴を履いて、ランニングマシンで走る体験も行ったそうです。

「キビラ」が面白いのは、セミオーダーでの低価格を実現したのに加えて、足の専門家の大学教授とも連携して、「痛くない靴」を実現していること。靴に足を合わせるのではなく、足に合った靴を提唱しており、利用客も年々増えています。訴求の仕方は、既製のスーツではなく、身体に合ったセミオーダースーツのコンセプトに似ています。

ただしフルオーダーの高級靴ではなく、セミオーダーのお手頃価格の靴なので、すべての人に合うとは限りません。