絶不調の中で見えてきたこと

けれどもそんな風に気持ちがふさいだ日々の中で、見えてきたことがありました。プライベートで覚えた強烈な違和感は、まだ仕事でやり残したことがあるのかもしれないという反動につながっていったのです。

そして東日本大震災を経験し仕事への意識が180度変わります。発声練習の一からの見直し、ニュースの勉強を徹底的にやりました。そしてダイエットと筋トレで体を鍛えて絞り込んだのです。不規則な生活も改善し、結果的に8キロも痩せました。そうした先に記者職への転身。ある意味私らしく「職人」としてキャリアを積む道が開けました。

職場での長時間労働や年齢差別、男性の旧態依然とした性別役割分業意識……。あれから10年たった今も、こうした慣習は大きな改善を見せず、女子アナに限らず多くの職業で女性は多かれ少なかれ葛藤を感じながら働いています。

キャリアとプライベートの間でさまようどっち付かずでふがいない自分。家事も育児も仕事も中途半端でもがく自分。男性であればこんな思いをしなくてすむのに……そう考えてしまうこともしばしば。

こうした社会を変えていくことはもちろん大事です。

それと同時に、今、10年前の私のように、どっち付かずの思いをしている女性がいたら一言お伝えしたいのです。どうぞその思いをしている状況にどっぷりと浸かってみてくださいと。とても苦しいことです。でも、だからこそ見つかる答えがある。違和感に蓋をせず、誰かが作った空気ではなく、徹底的に自分に問うた答え。そうして導き出されたキャリアへの強い意志は、次の困難に当たった時にも自分を支えてくれる力になるでしょう。きっと女性にしか持てない強さであると今の私には思えます。

写真=iStock.com 企画協力=シェアーズカフェ・オンライン

宮田 愛子(みやた・あいこ)
フリーキャスター

1982年、北海道出身。2005年、札幌テレビ放送入社。アナウンス部、報道記者を経て2017年にフリーに。