捨ててしまうようなモノに価値がつく
ほかにも、使い切ったトイレットペーパーやサランラップの芯(いずれも10~20本セット)が、500円程度で取引されることがあります。前者は子どもの宿題の工作材料に、後者はおもにダイエット中の男女が足裏やふくらはぎをマッサージするアイテムとして、それぞれ需要があるようです。
いわば、普通なら捨ててしまうようなモノに、メルカリが「新たな価値」を生み出した、とも言えますよね。
実はここがマーケティング上、一つのポイントでもあります。メルカリの取締役社長兼COO・小泉文明さんも、取材時に「われわれのマーケットプレイスのキーワードは、『“捨てる”をなくす』です」と教えてくれました。
つまり出品者本人にとっては、今はさほど価値がない、でもそれまでに育んできた何らかの愛着や「ただ捨ててしまうのは惜しい」といった思い入れがある。だからこそ、「もしこれをフリマアプリに出品したら、誰かが価値を感じて買ってくれるかもしれない」と、ドキドキワクワク、胸躍らせながら出品するのでしょう。
承認欲求が満たされる満足感
ただ、この部分だけなら、ヤフオクや他のフリマアプリも同じかもしれません。ところが小泉社長は、別のことを口にしました。それが「メルカリの楽しさの半分は、誰かに認めてほしい、あるいは認めてくれるといった『承認欲求』にあるのではないか」との視点。先のドングリのケースも、まさにそうですよね。
メルカリユーザーに聞いた「メルカリを使う理由ランキング」(2018年、図表1)を見ても、1位こそ「賢くお小遣い稼ぎができる」(34.2%)ですが、僅差の2位(33.2%)は、「捨てようと思っていたものが売れて得した気分になる」、そして5位が「あらゆるモノに価値がつく」(22.0%)。その根底には、「こんなモノが売れるんだ!」といった驚き、あるいは自身の承認欲求が満たされたことへの満足感が見え隠れしていると思います。
先日私が取材した、30代女性(メルカリユーザー)も「メルカリは、少しデザインが古くなった服や靴も『レトロでかわいい!』と褒めてくれるユーザーさんが多くてうれしい」と、やはり承認欲求が満たされた喜びを口にしました。