満を持して、エンジニアの聖地へ。ロボットで人々の生活を便利にしたい

トラ・ヴューさんがいる部屋には、たくさんのロボットが並んでいる。シリコンバレーでは今、ロボットが次のテクノロジーとして注目されており、ヴューさんが最高執行責任者(COO)を務める「オムニラボ」が開発しているのは「テレプレゼンスロボット」だ。

トラ・ヴューさん。開発したロボットが背後にずらりと並ぶ。

このロボットは自分が行けない場所に置けば、まるでそこにいるかのように代理で行動してくれるもの。企業のトップが支社や工場の訪問のために使ったり、病気で通学できない生徒がこれで授業を受けたり、遠方にいる医師が患者を診察したり。出張中の父親が子どもたちに「おやすみ」とあいさつすることも可能だ。

彼女がオムニラボにかかわるきっかけは、ニューヨークでの会議で同社の創業者に出会い、その後参画に誘われたこと。当時のヴューさんはニューヨークのエンジニアリング会社に勤め、高速バスのシステム開発チームを率いるテクニカル・ディレクターだった。同時に、ニューヨーク大学で、非常勤講師として交通工学と交通経済学を教えていたのだ。

「新しい挑戦ができる素晴らしい機会だと思いました」と、オムニラボ創業者と出会ったときの興奮をヴューさんは語る。さらにはシリコンバレーへの関心もあった。ここはエンジニアにとって抗し難い魅力を持つ場所。カリフォルニア州出身の夫も、故郷への引っ越しに同意してくれ、2人は17年間も住んだニューヨークを離れる決心をした。妻についてきた夫は「君の一番のファン」と公言してはばからない。パートナー選びをするとき、相手が自分を公私にわたってサポートしてくれるかどうかを見極めることも大切だ。

また、ヴューさんはオムニラボの関連会社「カンブリア」でも同じくCOOを務めており、多忙を極めている。COOとしては若いので、学習することがまだまだ多い。だから、友人やメンター、そしてアドバイザーを増やして、彼らの意見に耳を傾けるようにしている。さらには、常に社員や顧客に感謝の気持ちを持ち続けることも忘れない。「Thank you」と書いたメッセージカードを相手に渡して、気持ちを伝えることも。

「ニューヨークでは、余暇に大好きなサッカーをやったりジャズクラブに行ったりすることが多かったけれど、シリコンバレーに来てからすっかり生活が変わりました。大自然のなかでのドライブやハイキングが趣味になったのです」