問題視される「ハラスメントを許す風土」

セクハラがある職場にはパワハラもあることが、取材をしているとよくわかります。職場のハラスメントは個人ではなく、それを許す環境、風土が問題視されます。ハラスメントを許す風土のある職場では、女性はセクハラに遭い、男性はパワハラに遭っている。これは40代以上の世代のマネジメントスタイルと関連しています。「上意下達」のコミュニケーションスタイルしか知らない世代です。ある大企業のコンプライアンス担当者が社内調査したところ、圧倒的にハラスメント加害者は40代、50代が多かったそうです。

ちなみに、ハラスメントの多い職場の特徴を厚生労働省が調査した結果を見ると、「残業が多い/休みが取り難い」「上司と部下のコミュニケーションが少ない」「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」の3項目が挙がっています。

女性の出世がセクハラ対策にもなる事実

【近藤】ただ、入社してすぐの8年前に比べると、だんだん若手の女性は定着するようになってきたなと思います。社内の男女比率が半々まで上がって人数比率でも負けなくなったし、当時30代前半だった女性たちの職位が上がって発言権を得ていった。上層部もやりたい放題ではなくなってきます。

【佐々木】確かにここ数年、役職付きの女性に「じゃあ辞めます」と言われては困る……という雰囲気は感じるようになりました。

【近藤】役職を持った女性に下と結託してクーデターを起こされても困る。自分が役職についてから、ハラスメントの加害者世代に対して反論すると、その手が止まるようになったんですよ。最近は、私や私の部下に対してはセクハラ発言をしなくなりました。

【中野】縦社会だからこそ、職位が上がってきたり、ポストについたりすると、途端にクライアントもセクハラをしなくなる。男性って、権力とか立場とかをすごい気にしてますよね。

【白河】性的な意味ではなく、パワーの誇示ですかね。セクハラをする人って、自分の権力を確かめたいんだと思うんですよね。「俺に逆らうやついねぇだろうな」ってパワーを確認してる。セクハラとパワハラが必ず同時に起きているのも、それが理由なんでしょうね。

【中野】社内の空気が変われば、本当は違うんじゃないかって思っている男性陣も染まらずにいられるんじゃないでしょうか。

【白河】そうね。いかに風土に染まらないような人がいるかってことですよね。

【中野】と同時に、女性自身もやっぱり意識を変えなきゃいけないと思いました。例えば、羽田さんみたいにおかしいなと思って動く人もいる一方で、我慢しているならまだしも、自ら風土に染まっていったり、立ち上がった人に「余計なことしないで」って言ったりする人もいる。でも、少しずつ変わっていると思います。

【白河】社内研修や相談窓口も重要ですが、究極のセクハラ対策は、決定権のある女性が増えることなんですよね。皆さんが頑張ってきてくれたおかげで、職場で女性が「嫌なことは嫌」と言えるようになってきた。ぜひ出世してくださいね。