羽生善治さんも休日はボーッとしている

【山本】僕も平日は会社や現場を飛び回っていて、週末だけ大分の自宅に帰る生活。平日は絶えずいろんなタスクが差し込まれてきて、目の前のことだけで頭がパンパンになってしまいます。でも、休日に出かけて自然の中に没入すると、全部スッと抜けて脳に空きスペースができるというか、自分の本来のリズムを取り戻せる。本当の休息ってそういうことかなと思うんです。

【茂木】脳科学でも同じことが言われていますよ。脳には「デフォルト・モード・ネットワーク」という神経回路があって、これは何も考えずにボーッとしているときだけ活性化するんです。このとき行われるのが脳のメンテナンス。人はこれによって新しい気づきを得たり、ストレスが解消したり、創造性が高まったりします。棋士の羽生善治さんは、休日には何時間もボーッとするそうですよ。脳のメンテナンスをうまくできているから、対局であれほどの力を発揮できるんですね。羽生さんだってボーッとするんだから、普通の人がボーッとすることに罪悪感を抱く必要はない。堂々とボーッとしてほしいですね(笑)。

【山本】納得です! 頭がパンパンのまま休日を終えてしまったら、仕事で本来の力を発揮できません。きちんと休息して、脳をメンテナンスしないとダメですね。その点、自然の中には「やらなきゃいけない!」というタスクもないのでボーッとせざるを得ない(笑)。周りのことを忘れて、自分の感覚に集中できるのもいいところだと思います。

【茂木】忙しく働いている人ほど、GWのような長期休暇は脳のメンテナンスに使ってほしいですね。特に働く女性は、平日は会社員、妻、母などたくさんの役割をこなしているでしょう。本当の意味で休息するなら、自然の中に没入するとか、普段の役割から解放されて1人の人間に戻る時間が必要ですよ。

【山本】僕がガイドしていたお客さんも30~40代の女性は多かったですね。みな普段は忙しく働いている。会社員だけではなく、気疲れが多い看護師さんや保育士さんも少なくありません。それが自然の中に入るとすごくいい表情になって、思いっきり楽しんで帰っていく。そういう場面を見ると本当に嬉しくなります。