自分を否定せずに強みを伸ばして
相談者さんがモチベーションを失いつつあるのは、自分の強みだと思っていた部分が評価されず、弱みだと思う部分ばかり指摘されているからでしょう。現状は、強みを生かすことよりも、弱みをカバーすることに精一杯のようです。
でも、当初は上司からの期待値も高かったわけですから、決して能力は低くないはず。きちんとこなせている業務もたくさんありますね。そこを思い出して、自分を否定しないようにしてください。どんな社員にも苦手な分野があり、それと同時に存在意義も必ずあります。私は常々、部下には弱みを隠すことよりも、強みを伸ばすことに力を注いでほしいと思っています。
相談者さんは、ご自身の強みや弱みをきちんと把握されていて素晴らしいと思いますが、そこもメンターである先輩に客観的に見てもらっても良いかもしれませんね。人に相談することのメリットは、違う視点が得られることにあります。自分では気づかなかった強みや弱みが見えたり、業務を一段高い視野から見られるようになったりすることも少なくありません。それは成長の糧になり、自信にもつながっていきます。
最近は、回復力や復元力、弾力性などを意味する「レジリエンス」という言葉が注目されています。この考え方は、相談者さんが自信を取り戻す上でも非常に役立つと思います。書籍もたくさん出ていますから、ぜひ手にとってみてください。繰り返しになりますが、モチベーションの低下は誰もが経験すること。大切なのはそこからの回復力であり、自分なりの回復法を持っておくことだと知っていただけたらうれしいですね。
ロート製薬 取締役 プロダクトマーケティング部部長
大阪大学薬学部卒業。1981年ロート製薬入社。目薬、妊娠・排卵日予測検査薬、スキンケアシリーズなどの開発・発売に携わる。研究開発部、製品情報部、マーケティング本部、研究開発本部を経て2018年より現職。
文=辻村洋子 写真=ヒダキトモコ 写真=iStock.com