「優秀な新人」が「パッとしない若手」に
新卒で入社したばかりのときは優秀で、上司からも目を掛けられ、同期の中でも期待されていたのに、どうも成長がみられない。
たとえば新しいプロジェクトが始まっても、自発的に情報を集めるわけでもなく、自分から動こうとしない。上司から言われたことはちゃんとこなすけれど、それ以上のことをやろうとせず、やる気も意欲もみられない。それで上司が、「大丈夫だろうか? メンタル不調ではないだろうか?」と心配し、僕のところに相談に来るというケースが多々あります。
しかし、よくよく話を聞いてみると、若手本人は特にメンタルヘルスの不調というわけではなく、現状の自分に危機感を持っているわけでもありません。「いい上司に恵まれました」と満足しています。
こうして、当初は優秀だった新人が、2、3年経つと、主体性に欠け、何だか物足りない、パッとしない若手になってしまい、上司が頭を抱えることがあります。
「失敗したくない」「傷つきたくない」若手たち
指示したことはこなすけれど、上司に言われる前に自分で考えて行動を起こしたり、新しいことにチャレンジしたりはしない……。こうした若手には「失敗したくない」「傷つきたくない」という気持ちが根強いという傾向があります。誰でも多かれ少なかれ、「失敗したくない」という気持ちはあるものですが、こうした人たちにはそれが特に強いのです。
こうした傾向を持つ人は、まじめな人が多く、親や先生から言われた通りに進路などを決めてきています。学校の勉強や試験などは、「正解」が存在することが多いので、正解を求め、決められたことをまじめにこなして優秀な成績を収めてきているでしょう。親や先生の指示に従っていれば、叱られることもありませんし、むしろ「言うことを聞くいい子」と評価されます。周りの大人は、失敗しそうなことを避けた安全な道を示してくれるので、失敗の経験も少なく、素直に指示に従うことが成功体験になって積み重なっているのです。
その背景には、やはり少子化があるでしょう。SNSなどの情報伝達手段が広がり、成功のモデルケースが可視化しやすくなりました。一方で、将来に不安を抱える人も増え、周りの大人は、できるだけ「安全そうな道」を子どもに示して導こうとすることが多いように感じます。