考える社員を育てる質問の投げかけ

上司「最近、○○町の取引先から、『商品の到着が遅延することが多くて困る』というクレームが増えている。原因は何だろう? どうやったらわかると思う?」
若手「指定している配送ルートが良くないのかもしれません」
上司「ほかに可能性はないかな?」
若手「配送業者のせいかもしれません」
上司「配送ルートのせいか、配送業者のせいか、どうやったらわかるだろう?」
若手「配送ルートのせいなら、配送業者に関係なく遅延しているでしょうし、配送業者のせいなら、特定の配送業者のときに遅延が発生していると思います。○○町を担当する□□営業所に問い合わせて、配送記録を分析してみればわかるのではないでしょうか。早速□□営業所に配送記録を問い合わせてみます」

最終的に若手が行う作業は、まったく同じかもしれません。しかし、最初の例だと、上司に言われた通りのことをやるだけですが、2番目の「質問の投げかけ」だと、若手は自分で考えた結果、自分がやるべき行動にたどり着いています。

このように、上司が若手自身に考えることを促す「質問」を重ねると、若手は自分で仮説をたてて「何をすればいいか」を考えるようになるはずです。

若手が挑戦できる社風や環境づくりを

「上司に言われたことしかしない」という社員も、もともとは優秀な新人だったはずです。誰もが、能動的に動くことができる優秀な社員にも、ぱっとしない“指示待ち”社員にもなる可能性があるのです。

これはもちろん、上司の育て方や本人の性格でも左右されますが、会社の環境や社風も影響するように思います。

加点方式で評価する会社では、本人の積極的な姿勢がプラスに働きますが、減点方式の会社だと、失敗するたびに減点されていくので、新しいことに取り組むことに恐怖心が生まれやすくなります。

人手不足はどんどん深刻化していますし、新しいことを試していかないと生き残れない時代です。社員のモチベーションを下げてしまう減点方式ではなく、新しい挑戦を促す加点方式に変えていかないと、優秀な人材を確保し、育てていくことは難しくなるのではないでしょうか。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。