ところが、社会に出て仕事をし始めると、新人の頃は、上司の指示通りにやっていれば評価されますが、だんだんそれだけでは足りなくなり、評価されなくなってきます。特に今のビジネスの世界では、自走できる人、新しいことにチャレンジできる人が求められていますから、入社2、3年にもなってくると、単に指示通りに仕事ができるというだけでは、「物足りない」「パッとしない」「“指示待ち社員”では困る」と言われるようになってくるわけです。
「優秀な新人」に「優秀な上司」がつくと危ない
優秀だった新人が、「ぱっとしない若手」になってしまう原因の一つに、“優秀な”上司の存在があります。実は「優秀な上司」と「優秀な新人」という組み合わせは、非常に危険な面があるのです。
ここで言う“優秀な”上司とは、現場で成果をあげてきた上司のことを指します。こうした上司は、必ずしも育成に長けているとは限りません。現場で成果を出すやり方を知っているので、つい、そのやり方をそのまま若手に伝授しようとしてしまう。特に最近は、自分も現場で成果を出しながら、同時にマネジメントを行うことも求められるプレイングマネジャーが増えているので、その傾向が強くなっているように感じます。
現場で優秀な上司は、「正解の道筋」を知っているので、すぐに答えを言ってしまうのです。つまり、「いい指示」を出しすぎていて、新人に考える余地を与えないのです。
新人の方は、上司の指示通りにやれば合格点がとれてしまうので、「自分で考える」という力が全く育ちません。でも入社2、3年になって、自分でやり方を考えることが求められるようになったときにも、それができないままなので、ずるずると評価が下がってしまいます。
上司の側は、いくら正解を知っていても、それをそのまま伝えないよう我慢する力が必要です。「その通りにやれば成果が出てしまう」という、具体的で丁寧な「うますぎる指示」を出さず、本人に考えさせるような育成をすることが求められます。
「指示したことはやるけれど、能動的に動こうという意欲を見せない。メンタル不調だろうか」と上司が心配するような“指示待ちの若手”は、実は上司自身がそうなるように育ててしまっていることがあるのです。
「指示待ち社員」を生まないためのポイント
若手を「指示待ち社員」にしないためには、大きく2つのことを意識するとよいでしょう。
①「失敗しても大丈夫」と思える雰囲気を作る
失敗経験が少ない人は、ちょっとしたミスでも「周りから責められるのではないか」と恐れたり、「ほかの人に迷惑をかけているのでは」と罪悪感を持ったりします。ですから、普段から「失敗しても大丈夫なんだ」と思える雰囲気を作る必要があります。