前者については、全国の事業所にポスターを貼ったり、人事制度や育休取得者の体験談を紹介するウェブ会議を行った。
「実際に育休を取るとどうなるのか、体験者のリアルな話はやはり効果があったと思います。参加者も多く、手ごたえを感じました」
一番きつかったのは、出産直後の25日間
とくに、15年12月から試験導入されていた制度には大きな反響があった。新潟の事業所で働く男性MRから人事部に、「育休は取りたいけれど、得意先の対応ができないのは困る」と相談があり、上司が必要と判断した業務に限り、育休中の臨時就業が許可されていたのだ。
マーケティング部門で働く梅田真史(まさふみ)さん(入社12年目)もこの制度を知り、三男が生まれたとき、有給休暇と育休を合わせて3カ月の休暇を申請した。
「長男がママにべったりで、僕に対してそっけなかったんですよ。だから次にチャンスがあれば絶対に育休を取りたいと思ってました。想像していた以上に大変でしたが……」
一番きつかったのは、すべての家事・育児を引き受けた出産直後の25日間だった。だが、妻の体調が戻ってからも、家事のやり方にダメ出しをされて何度も落ち込んだという。
「『あとでやるから置いておいて』と言っても、『今やらないなら私がやる!』と言われてしまう。からあげを揚げている5分の間、息抜きのビールを飲んでいたら、『その間に次のおかずを作れるよね』。ほめてもらえないのはつらかったですが、こんなわずかな時間も無駄にせず、家事・育児を回している妻はすごい、と尊敬しました」
上司の承認を得て、2カ月目以降は週1回テレビ会議に参加したり、資料作りもしていたが、3カ月間ずっと家にいたことで、家族とは何か、仕事とは何かを真剣に考えることができたと梅田さんは言う。
育休終了後も、夜の皿洗いと洗濯は継続し、さらに週1回は16時半に帰り、10日に1回は在宅勤務をして、家事と育児を支えている。
15年に9%だった男性の育休取得率は、17年には33.3%と4倍近くに増加。育休中の臨時勤務制度は17年10月から正式に制度化された。