訪問は、あえて雨の日に
スポットライトがあたる政治家の影で、地元で地盤を固める取り組みを続ける政治家秘書。国会議員の地元秘書を20年間務めた人物に、秘書としての人心掌握の取り組みを聞いた。
まず、選挙では「好き嫌い」が最後の決め手になる。政策だけでなく、ルックス、家族や学歴などの背景に人々は関心を持つ。「エリート」「美人」「金持ち」といった要素が「ひがみ・やっかみ」が生まれる原因になり、選挙戦に悪影響を与えることもある。逆に、「同情」は追い風になることがある。「かわいそうだ」「あんなに頑張っている」「奥さんがいい人だ」「悪いことはしない人だ」「秘書がいい人だから」などという場合もある。秘書はそれを知っているから、支持者の自宅を訪問する際には、あえて雨の日を選ぶこともあるという。
キーマンに、ふさわしい役職をつける
選挙では、多くの人々と交流があり、影響力を発揮する人に支持者なってもらうことが何より大切だ。その人に声を掛ければ、何十人、何百人に情報が伝わり、集会に人を集めてくれ、それが選挙戦の基盤づくりにつながるからだ。秘書は、「いつも人を誰かを誘っている人」に目をつける。「お茶に誘う」「食事に誘う」「旅行に誘う」といった能動的なタイプの人ほど、キーマンになってくれる要素が強いという。
地元の選挙事務所に来る人たちは、自治会のおじいさんから婦人会・老人会のおばあさん、PTAの役員や消防団などの青年部、若手経営者から上場企業の社長まで幅広い。そんな人たちが、選挙事務所では共通の趣味や子供や孫の話、美味しいお店の話で、世代や職業を超えて盛り上がる。こうした交流はその後、地域の人脈づくりにつながるため、絶対に軽視してはいけない。
選挙が始まる前に、日常活動の後援会や支援組織を選挙対策委員会という形に整え、組織を一本化する。地域の要職者や地方議員、有力者を味方につけるには、顧問、最高顧問、相談役といった役職を依頼することだ。その人の立場とプライドに相応しい役職を引き受けてもらえるようにする。要職を引き受けてもらえば、それで十分協力を得られる。もし依頼を受けてもらえない場合は、他陣営に行かないようにお願いする。