「できたら専業主婦」が、3割いる理由とは?
女子就活生の話を聞いて驚いたのは人生のリスクに敏感なことだ。9割を超える学生が出産後の就業継続を希望し、共働き志向が強いことがわかるが、なぜ共働きなのか。東京大学の杉原さん(仮名)は、「1人だけだと技術革新が進んでキャリアショックが起きたときのリスクが大きいから」と長期のリスクヘッジに備える。上智大学の滝川さんも、「離婚や死別したら収入がゼロになるのは絶対に避けたい」と語る。
武石教授は、自律的な個人として長期的に人生を考えることは評価できるとし、その背景をこう分析する。
「最近の専業主婦の母親は、少し前の世代と違い、『私はやりたいことができなかったけど、あなたはやりたいことをやりなさい』という人が増えているように感じます。母親は身近なロールモデルなので、どのような行動をとるかはとても重要」
しかし、専業主婦になりたい人も3割強と少なくない。上智大学の高橋さん(仮名)は、「子どもを産んでも働き続けたいと思うけど、正直言って働き続けられるのか不安もあります。専業主婦が楽かもしれないという気持ちもわかります」と語る。
働き続けられなかった場合の選択肢として、「専業主婦」が入るのかもしれない。
実際に大卒後3年以内の離職率が3割という状態が長く続いている。この世代をどう職場で受け入れるかは、重要な課題だ。谷出さんはまず世代の特徴を知るべきだという。
「人間関係のつくり方や情報の伝達をスマホで学んだ完全なスマホ世代で、精神論が通じません。この仕事をやってと指示しても『どうしてこれをやるんですか』と聞いてくる。説明し、納得しないと動きません。また営業でアポを取ってくれとリストを渡しても、『別に電話でなくてメールでもいいし、SNSでつながっていれば、それでアプローチすればいいじゃないですか』と提案してくる。今までは1つの方法しかなかったので、やれ、と言って通じましたが、彼女らは『いろんな方法があるのになぜ受け入れられないのか』と不満を抱くことになる。モチベーションが下がり、辞める人が出てしまうんです」