今、「ウインターブルー」ともいわれる「冬季うつ病」がジワリ、ジワリと注目されるようになってきた。日本人の10人に1人はウインターブルーといわれているだけに、あなたもその1人である可能性は極めて高い。
たとえば、次のようなことにあてはまってはいないだろうか。
●冬になると睡眠時間が長くなる。
●冬になると気分が憂うつになる。
●冬になると仕事のミスが目立って多くなる。
●冬になると外に出るのが億劫になる。
●冬になると食欲がアップする。
●冬になると甘い物やうどん、そば、ラーメン、ご飯といった炭水化物を好む。
以上の項目には、すべて頭に「冬になると」という条件がついている。これがウインターブルーのウインターブルーたるところだ。
ウインターブルーになるメカニズムは、現時点ではまだ詳しくはわかっていない。そんな中、セロトニンとメラトニンという2つの脳内物質が関係しているという説がある。
うつ病はセロトニンの低下で起きるという科学的発表は数多い。事実、冬季にはセロトニンの分泌量が低下している。
セロトニンは暗くなると自然に活動を停止し、代わってメラトニンが活動する。メラトニンは睡眠へと誘うが、分泌が多くなりすぎると、やはり、うつ病を引き起こすと考えられている。
さらに、日照時間の低下説も強力だ。ウインターブルーには日光にあたらずに生活している人がかかりやすく、それは日照時間の減少で生体リズムに変調が起きるからだと考えられている。
つまり、仕事をしている人々の中には、昼は社内で日光にあたらずに過ごしている人が多く、冬季になると日照時間が減少するために、その人々は通勤時にさえも日光をほとんど浴びられなくなってしまう。
原因は詳しくわかっていなくても、治療はすでに有効なものが行われている。日光にあたる時間が少ないのだから、日光を十分に浴びると効果がある。いわゆる「光療法」だ。
光療法では、高照度光照射装置を用いて人工的に強い光を患者に照射する。室内灯の5~10倍の明るさの2200~3500ルクスを1時間、ときには2時間浴びる。1日1回、朝方に行い、患者は強い光を見る必要はなく、光の前で本や新聞を読んだり、お茶を飲んだりして過ごせばいい。
もちろん、受診するのは精神科で、それも光療法を行ってくれるところを選ぶ必要がある。早期発見・早期治療すれば治りは早い。
食生活のワンポイント
ウインターブルーを予防するには、食生活の前に、まずは日光を浴びる習慣をしっかりつけることだ。目覚めたときに、すぐにカーテンを開けて朝の光を十分に浴びる。散歩をするのは、体のリズムを正常に保つうえでも効果が高い。
仕事の関係上、どうしても朝日を浴びるのが無理な場合は、高照度光照射装置は3万~5万円程度で市販されているので、購入するのもひとつの方法である。
食事としては、ストレスをはね返す栄養素がいっぱいつまった食材をとるべきである。ストレスに対抗して神経を正常に保とうとするのはビタミンB1(玄米、豚肉、納豆、焼きのり、そば、ゴマ……)、抗ストレスホルモンを作るのに必要なビタミンのビタミンC(ブロッコリー、ゴーヤー、ピーマン、小松菜、キウイ、レモン……)、そして、神経の緊張や興奮を鎮静化させるミネラルのカルシウム(煮干し、ひじき、ゴマ、牛乳、チーズ……)。
これらの食材をチェックしてわかるように、冬場は丼物やカレーライスといった単品物ではなく、鍋物などで多くの食材を口にすべきだ。もちろん、毎日同じ鍋では意味がない。