なぜ中間管理職は改革を邪魔するのか?

【酒井】大西さんはこれからもさらにご活躍されると思いますが、経営者という部分でも個人のものでもよいのですが、信条をお持ちでしたら教えていただけますか。

【大西】嘘偽りのない真心、という意味の「忠如」を大事にしたいと思っています。謙虚に人のいうことを、とくに下の人の話に耳を傾け、そのうえで自分の主張を出していきたい。トップに立つ人間は、そういう姿勢で夢やビジョンを発信し、会社で働く人はその夢やビジョンに共有してついてくる。そういう形が肝要だと思っています。

【酒井】これまでのお話をお聞きしていると、大西さんは人を非常に大切する、とくに若い世代を大切になさっていると感じます。

【大西】経営の側に立つと、そのときの業績をいかに上げるかが大きな課題になるわけですが、同時に10年後、企業が残ってどのように成長しているかも日々の課題になります。そうすると、10年後には現在の30代、40代前半の人たちが、場合によっては20代の人がトップマネジメントの位置につくわけで、彼らに焦点を合わせることが大事だと思っていました。

また、前にも述べたように百貨店では販売スタッフも重要です。よって、必然的に若い社員との対話が増えました。彼らは感覚的に新しい価値観をもっているので、私のほうも学ぶことが多かった。これは一方で、中間管理職とのコミュニケーションが足りなかったと批判されることにもなってしまいましたが。

【酒井】実は企業の中で、いちばん自社と取引先以外と接点がない、つまり社会と触れ合っていないのが中間管理職なんです。トップに立つ人は外部の人との接点が多い。新入社員など社歴の浅い若手社員も、まだ会社に染まる前で社会との接点が多く、生活者感覚が失われていない。

それに比べると、組織にどっぷり浸かってしまっている中間管理職は、社内や取引先の人としか会っていないことも多い。ですから、日本企業の場合、変革の足を引っ張るのはたいてい中間管理職なんです。

【大西】もちろん人によりますし中間管理職を否定する気はありませんが、彼らも家庭があって組織で働くので仕方なく守りに入ってしまう部分はあるのかもしれません。若い人たちは、そもそもモチベーションが非常に高いこともあって、そういう意味でも若手との対話は重視していましたね。