疲れた心にジンワリ染み込む音色
頭の芯まで疲れた日には、玄関を開けて、バッグを置いたらそのまま、ヴィラ=ロボス作曲のガボット・ショーロを福田進一のギターで聞いてほしい。
指が弦を弾く軽やかな音を聞きながら、ジャケットを脱ぐ。ピアスも指輪も外してしまう。ストッキングまで脱ぐのが面倒なら、そのままお湯を沸かそう。温かい紅茶を入れる。その間もずっと福田進一はあなたのそばでギターを優しく鳴らしている。テンポは割にゆっくりで。
注いだばかりの熱いマグカップを両手で抱えたら、ソファに座る。そして、そのままこの曲が終わるまで、ほんの5分程度ではあるけれど、ただそこでカップを抱えてじっとしてほしい。手が温まるころには、福田進一のいたずらっ子のような一瞬の光る音色と、全体を覆うセクシーさの両方に、耳が馴染んでいるだろう。
そしてふと気づく、肩にあれだけ入っていた力が、今ふっと抜けていることに。がちがちに天然の肩パットをいれているような武装を、この曲で解除しよう。ギターの温かさが、疲れた心にじんわり染み込んでくる。この曲は心の浸透圧が高いのだ。
今日も頑張ったね、まずは一息ついてね、と優しく諭されるような福田進一の音は、何も押し付けることなく、隣に優しく座ってくれるような音。疲れた日にそんなガボット・ショーロに浸ってほしい。