“頭脳派”が考える、経営の肝

――最後に、両角さんが考える「経営のコツ」を聞きました。

常に考えることです。もっとよくするにはどうしたらいいか。もっとできることはないのか。あとは、短期に儲けるのではなく、長期的に収益を極大化することを目指しています。

お客さまの満足度を高めて、もっとリピート率を上げたい。そのためなら、席に余裕があっても満席にしません。料理の説明もできない、出てくるのも遅いのではダメでしょう。クオリティ・コントロールは意識しています。一方では、顧客ニーズに応えようとしすぎて、つまらない店になっていないか。これは、本当によく自問自答しています。

僕は今、エグゼクティブコーチを雇っているんですよ。もう5年ほど。コーチは僕にこう聞いてきます。「それは、あなたがやりたいことなの? これをやってあなたは幸せになる?」。ロングランで見たときに、自分のやりたいこと、自己実現ができるかどうかを大切ですよね。自分が働いていて楽しい店にしていきたいんです。赤字にならない限りにおいては、わがままを通したい。倒産してしまったら元も子もないのですが、「儲かるか、儲からないか」ではなく、「やりたいか、やりたくないか」や「僕がハッピーか、ハッピーじゃないか」で決めていきたい。そのためのコーチングです。

コーチングのよいところは、効果的な質問をもらうことによって、自分の頭の中のアイデアを引き出してくれることなんですよ。たしかに「飲食業界の常識」は存在していますし、それが無意味とは思いません。でも、僕にはできないこともあるし、やりたくないこともある。今の状況を見て、自分で答えを見つけていきたいんです。

(荒川 龍=構成 小川 聡=撮影)