結婚・出産もできる所長になる目標もある

東京のオフィスビルの建設現場に、「今後は出産・子育てを経ても、工事長(所長)になり、ゆくゆくは幹部社員になることを目標にしています」と頼もしく話す女性がいる。10年に入社した本間萌絵さんだ。東京で5現場、大阪で3現場を経験し、16年夏に東京に戻ってきた。

東京支店 建築第一部 本間萌絵さん

最初に配属された現場はビルの解体中で、「初めて現場に入ったときは廃墟のようなところで怖くなり、すぐ辞めたいと思いました(笑)」。だが、現場の事務員に女性が2人いて寂しくなかった。女性用の更衣室やトイレも備わっており、人間関係にも恵まれた職場だったので、「辞めたい」となかなか言い出せなかった。

現場監督として自分の父親のような職人に指示を出すことも日常茶飯事だ。最初はきつい言い方をしてしまって嫌がられることもあったが、だんだんうまく仕事をお願いできるようになった。

以前は、朝早くから夜遅くまで働いて、休みも取りにくい時期があり、「仕事しながらプライベートを充実させることなんかできるだろうか」と不安に駆られた。しかしノー残業デーの導入や一斉土曜休日が始まり、2、3年前からは生活に余裕も出始めた。

「上司からも『早く帰りなさい』『優先順位をつけて今日どこまでやるか決めなさい』とよく言われるようになりました。将来両立がかなうように、少ない時間でもっと効率的に仕事ができるようにしたい」

建築の現場は東京を中心に都市部に集中しているので、結婚しても住居を移さず、現場を移っていくことは可能だと思っている。

2013年に社内で初めて「女性活躍推進フォーラム」を開催。国内外から約300人の女性従業員が参加。金子さんと西岡さんはパネルディスカッションにパネリストとして登壇した。

現場の女性たちの不安にどう応えるか

建築の本間さんに比べ、土木の上野さんと木下さんは現場が山奥にあるので、プライベートの充実が描きにくいかもしれない。八ッ場ダムの取材のとき、ダイバーシティ推進室の西岡さんも彼女たちの声に耳を傾けていた。

上野さんは高校時代の同級生と比べて焦ることも多いという。

「仲の良かった友達が今度結婚するとか、産休に入っているとか、そんな話を聞くと、私は何をやってるんだろうなと思うこともあります」

西岡さんも元は土木現場の技術者だ。彼女たちの気持ちはわかる。

西岡さんはダムの工事現場を歩きながら、グッと背伸びをして「やっぱ現場はいいな」と口にした。そして2人のほうを向いた。

「今はつらいと思うことも多いだろうけど、いつか現場で仕事をして本当に良かったと思える時が来るよ」

現場の女性たちの両立をどう支援し、彼女たちのキャリアを築いていくか。これからが女性活躍推進の本番だ。

撮影=市来朋久