総合職本格採用4期生。自分がロールモデルとなる

上野さんはすでに3カ所の現場を経験してから八ッ場ダムにやってきた。茨城県出身の上野さんが初めて入ったのが阪神高速道路のトンネルの工事現場だった。

土木東京支店 八ッ場ダム建設所 上野 萌さん

地面を掘り下げ、そこにボックス状のコンクリートのトンネルを構築する作業が進んでいた。新人の上野さんは現場監督として作業員に指示を出す仕事のほかに、工事の検査の対応やそのための資料作成などに当たった。

同社は入社後、育成のため2、3年ごとに職場を替わるローテーションを行っている。そのため工期の長い現場だと完成を目にできないこともある。上野さんは幸いにも開通式まで経験することができた。

「開通前のハイウェイウオーキングのイベントで、自分が担当した箇所を写真に撮っている人を見たときは感激しました」

その後、千葉でのトンネル工事や民間工場の工事に携わった後、八ッ場ダムにやってきた。着任したのは16年の1月。上野さんは木下さんのように現場に出ることはほとんどなく、事務所で原価管理や役所に提出する検査書類の作成の仕事を担当している。

「ひとつ前が小さな現場で、お金の管理を全部やったので一通りは経験していますが、ここは額がケタ違いですし、予算項目の数もすごく多いんです」

同社が女性の総合職を本格的に採用し始めたのが08年で、上野さんは4期生だ。キャリアを描くうえで、ふさわしいロールモデルが存在しないので、自分で試行錯誤せざるをえない。

「最近、所長や副所長からお酒の席などで『女性初の所長になってくれよ』と言われます。かなり期待はされているんだろうとは思いますが、“女性初”はプレッシャー。ちょっとミスをしたら、『やっぱり女は』と言われかねない」

上野さんは、現場にもっと女性が増えて、女性所長が当たり前になる日を待ち望んでいる。