国立大学は、高等教育への機会均等を確保するために設置されているが、国の財政が厳しいことから「一定の受益者負担を求めよう」ということだ。実際、法人化された04年度から16年までの12年間で1470億円(11.8%)の交付金が削減されている。削減された分を授業料の値上げで賄ってきた。

「15年12月、文部科学省はこのまま交付金の削減が続くと、国立大学の授業料が31年度には年間約93万円になると試算を公表し、物議を醸しました。のちに文部科学省はあくまで計算上の数字で実際に上がることを決定したのではないと撤回しましたが、財政が厳しいなか、今後政府がどれだけ教育に財源を割くことができるかは難しい問題です」(東氏)

年間約93万円とすれば、さらに約40万円の値上げを想定していることになる。国税庁の調査をもとに概算すると、会社員の平均月収は約35万円(15年分)。約54万円という現在の学費は月収の約1.5倍。学費が約93万円まで上昇すれば、月収の約2.7倍に。そこまで学費を負担して大学に通わせる意味があるのか、という費用対効果としての疑問も生じる。

国立大学の「運営費交付金」に当たる私立大学の「私立大学等経常費補助金」の支給はほぼ横ばいだが、もともと支給金額が少なく、収入の多くを学生からの学費で賄っている現状がある。一方で人件費や設備費、研究費などの経費が年々かさんでいるため、私立大学でも授業料の値上げが続いている。

進学は金銭的価値が重視される時代に

「大学に通う価値を親子で考え直してみる必要があるでしょうね」(東氏)

東氏によると、大学を卒業した場合の価値は金銭的な価値と非金銭的な価値に分けられるという。金銭的な価値の代表は、「生涯賃金の上昇」だ。学費を上回る収入増があれば進学の価値がある。対して非金銭的価値の代表は「学歴」だ。進学率が低いときには、「大卒というだけでいい会社に就職できる」「周囲から尊敬される」などのメリットがあった。

「全入時代にあっては、非金銭的な価値は、今までと比較して相対的に下がりますから、金銭的価値がより問われる時代になります」(東氏)

労働政策研究・研修機構の発表によると、引退までの生涯賃金は高卒男性が約2億4500万円。対して大学・大学院卒の男性は約3億2000万円と明らかに多い(図表2左)。しかし、これは平均値。ファイナンシャルプランナーの菅原直子氏はこう指摘する。

「高卒で従業員数1000人以上の大企業に就職した場合と、大学・大学院卒で従業員数10~99人の中小企業に就職した場合で見ると、高卒のほうが生涯年収は高くなります」(図表2右)