制度・意識・働き方3段階の改革

「ポジティブ・アクションを始めたのは当時の社長だった中島美博(現会長)です。いまの社長の榊真二もそうですが、もともと東急ハンズ出身で、パートナー社員(契約社員)の女性たちに商品の発注管理やレイアウトを任せたところ、売り上げ増加や企業の活性につながったという経験をもっていた。実は不動産でも購買決定権が女性にあるケースが多い。そこで女性活躍を“イノベーションを生むための成長戦略”と位置づけて、トップダウンで進めていったのです」

こう語るのは、人材開発部長兼能力開発課長兼ダイバーシティ推進課長の野中絵理子さんだ。具体的には、社内に休日保育所を開設したり、休日保育支援手当を支給したりなどの両立支援に始まり、研修やセミナーで女性の意識改革をしながら、希望の職種や役職にみずから手を挙げてもらう「公募制」「ポストチャレンジ」、さらに亀村さんのように専任職から総合職に移りたい人のための「コース転換」など人事制度改革に着手した。その結果、12年には3人だった公募制やポストチャレンジの応募者が14年には17人に。12年には5.2%だった総合職の女性採用比率が15年には23.6%に増加した。2016年は時差出勤とテレワークの段階的導入を開始した。

<Action>女性が活躍できない原因を1つずつ対策!

2012年、中島美博社長(現会長)のもと、「ポジティブ・アクション(女性活躍推進)」がスタート

▼「変革し続けること」が唯一の成長戦略!
<3段階でダイバーシティを推進>

第1段階(2013~14年):女性が活躍するための制度を整備
事業所内休日保育所開設(リバブル キッズルーム)/ベビーシッター育児支援/休日保育支援手当など
→育休期間を延ばすだけでなく、両立したい人を応援する制度に。

第2段階(2013~15年):女性社員や管理職の意識改革
ポストチャレンジ・公募制・職掌転換制度を導入/女性社員のメンター制導入/女性社員や管理職へのセミナーなど
→女性の中でポジティブ・アクションを自分事としてとらえていない人や、「自分の部署には女性がいないから関係ない」と思っている男性管理職にも変化を促す。

第3段階(2016年~):「働き方」の改革
時差出勤(スライド勤務)の運用開始/テレワーク(在宅勤務)を段階的に導入(2018年に全社導入予定)など
→すべての社員が最大限の力を効率よく出せる環境をつくり上げる。
<Achievement>自ら挑戦する女性が急増! 男性も働き方に変化が

▼会社が変われば人も変わる!

・女性育児社員数2012年から2014年で1.9倍に!
・公募制・ポストチャレンジ・コース転換制度への女性応募者が2012年3人→2014年17人に!

さらに……

・女性活躍推進の取り組みにより、女性の採用が急増! 総合職の女性採用比率が2012年5.2%→2015年23.6%に!

テレワークや時差出勤を子育て中の女性社員に導入するのは、あまり抵抗なくスッと受け入れられる。ところが全社員に適用するとなると、「そんな必要があるのか?」という議論がどうしても出てくるのだと野中さんはいう。

人材開発部長 兼 能力開発課長 兼 ダイバーシティ 推進課長 野中絵理子さん

「男性社員は自分には制約がないと思っている。でもそれは勘違いで、本当は子どもがいるなら、子育ての制約を誰かが担っているはず」

たとえ子どもはいなくても、親が要介護状態になるかもしれない。あるいは自分自身が病気になって療養生活に入るかもしれない。たまたま今はそうではないというだけなのだ。

「それなら今のところ働き方に制限のない人は、制限のある人を支援しましょう。その人の制限がなくなったときは、自分が支援される立場になっているかもしれないのだから」(野中さん)

東急リバブルでは障害者も在宅勤務で雇用しているが、いままでは受注した業務を納品することが仕事だった。しかし「何かアイデアない?」というように働きかけると、新規事業のアイデアなどが出てくるようになったのだという。野中さんはこう続けた。

「これは彼らが私たちを支えてくれているということです。だからどうすれば全員が最大限活躍できるかを考えること。それがダイバーシティだと思います」

撮影=広川智基