続かない糖質ゼロより継続可能な糖質制限を

糖質ゼロをめざすのでなく、1食あたりの糖質量を抑えて食べる方法が有効だという山田さん。「一時的な食事の改善でやせようとしても、すぐに戻ってしまうものです。続けられない食事法よりも、ストレスが少なくて長く続けられるほうが、ダイエット面でも健康面でも効果は大きいのです。だからこそ極端な糖質制限は避けるべきでしょう」

糖質制限や食べる順番など、今ちまたで話題となっているダイエット法の多くは血糖値の上昇を抑制するメソッド。

糖質を多く含む米や麺、パンなどを食べると血液中のブドウ糖(血糖)が一気に増加。すると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌され、上がった血糖値を下げて、エネルギーとして使えるように、血糖を筋肉へと取り込む。ところがエネルギーとして使いきれず、余ってしまった血糖は、そのまま中性脂肪として体内に蓄えられてしまうのだ。そのためインスリンは別名「肥満ホルモン」と呼ばれている。「脂肪が増えると今度はインスリンの効きが悪くなっていきます。すると、それをカバーするために、さらに多くのインスリンが分泌され、より太りやすくなると、負のスパイラルに陥るわけです」(山田さん)。

主菜=豆腐+ゆで卵、油脂=マヨネーズ、野菜=ほうれん草+ブロッコリーで比較。後者になるほどタンパク質、脂質、食物繊維を多く摂取。食後血糖値は後者ほど上がりにくいという結果に。

実は血糖値の上昇には、糖質の摂取が大きく関わっている。インスリンが多く分泌されるのは糖質を摂ったとき。タンパク質や脂肪ではほとんどインスリンは分泌されないため、糖質を控えると、減った糖の代わりに、脂肪がエネルギーとして使われるようになる。だから、しっかりと食事をしてもやせやすくなっていくのだ。

「野菜→米、米→野菜という順で食べたときの血糖値を測ったものと、肉→米、魚→米、米→肉の順で食べたときの血糖値を測ったもの。この2つの研究結果が発表されていますが、どちらの研究でも、米を先に食べた場合の血糖値の上昇率が一番高いんです。また血糖値が上がらないといわれる低GIと高GI、低糖質と高糖質食品を組み合わせて4つに分類したときに、一番上昇率が低いのが、高GIまたは低GIと低糖質の組み合わせ。つまり血糖値を上げないためには、糖質は食事の最後に食べることと、量を控えることがベストだと考えています」(山田さん)

ちなみにご飯1膳(150g)に含まれる糖質は55g。角砂糖17個分に相当。また、糖質はご飯や麺以外にイモ類や大豆以外の豆類、お菓子、果物などにも多く含まれているので摂取の際は注意しよう。

山田 悟(やまだ・さとる)
医学博士/北里大学北里研究所病院糖尿病センター長。日本糖尿病学会学術評議員。日本臨床栄養学会学術評議員なども務める。2013年11月、一般社団法人 食・楽・健康協会を設立。ロカボライフ=ゆるやかな糖質制限を提唱。近著に『緩やかな糖質制限 ロカボで食べるとやせていく』(幻冬舎)、『dancyuダイエット実践ロカボライフ!』(プレジデント社)。

別府麻衣=イラスト 教える人:医学博士/北里大学北里研究所病院糖尿病センター長 山田 悟