糖質の摂取は、見た目だけでなく体内年齢にも大きく作用

ダイエットに効果的といわれる糖質制限は、体型だけでなく、健康も左右すると言うのは、ゆるやかな糖質制限を提唱する北里大学北里研究所病院糖尿病センター長 山田悟先生。

「糖質は体内のさまざまなタンパク質と結合し、糖化反応を起こすと言われています。糖化は老化現象の一因でもありシワ・たるみなどの見た目の問題、動脈硬化症のような病気としての加齢現象、冷え症など普段の生活での不調にも関わってきます。それだけ糖質はいろいろなことに影響を及ぼすもの。だからこそ食事の摂り方が大切なのです」

イラスト=別府麻衣

だが、ただ糖質(炭水化物)を食べなければいいのかというと、そんなに簡単なものではないよう。

「初期に流行った糖質制限は、摂取する糖質の量が少なければ少ないほど、効果が上がるというものでした。また、最近では糖質を極力減らすことにより、脂肪をエネルギーとして使ったときの代謝副産物であるケトン体を体内で増やしてダイエット効果を得るという、ケトジェニックやアトキンスダイエットも注目を集めています。

しかし、そこまで糖質を減らすには、みりんなどの調味料はもちろん、片栗粉や根菜類のような野菜も制限しなくてはいけなくなります。ブロッコリーや葉野菜は食べられますが、ニンジンもタマネギもダメ。となると、野菜に含まれる多くのビタミンや食物繊維が不足してしまうことになるのです。野菜も調味料も制限されるとなると、かなり味気ない食生活になってしまいますよね。そもそもケトン体については、人によりその見解が大きく分かれます。私は、現状ではいいとも悪いとも断言できないものだと思っています」

続かない糖質ゼロより継続可能な糖質制限を

糖質ゼロをめざすのでなく、1食あたりの糖質量を抑えて食べる方法が有効だという山田さん。「一時的な食事の改善でやせようとしても、すぐに戻ってしまうものです。続けられない食事法よりも、ストレスが少なくて長く続けられるほうが、ダイエット面でも健康面でも効果は大きいのです。だからこそ極端な糖質制限は避けるべきでしょう」

糖質制限や食べる順番など、今ちまたで話題となっているダイエット法の多くは血糖値の上昇を抑制するメソッド。

糖質を多く含む米や麺、パンなどを食べると血液中のブドウ糖(血糖)が一気に増加。すると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌され、上がった血糖値を下げて、エネルギーとして使えるように、血糖を筋肉へと取り込む。ところがエネルギーとして使いきれず、余ってしまった血糖は、そのまま中性脂肪として体内に蓄えられてしまうのだ。そのためインスリンは別名「肥満ホルモン」と呼ばれている。「脂肪が増えると今度はインスリンの効きが悪くなっていきます。すると、それをカバーするために、さらに多くのインスリンが分泌され、より太りやすくなると、負のスパイラルに陥るわけです」(山田さん)。

主菜=豆腐+ゆで卵、油脂=マヨネーズ、野菜=ほうれん草+ブロッコリーで比較。後者になるほどタンパク質、脂質、食物繊維を多く摂取。食後血糖値は後者ほど上がりにくいという結果に。

実は血糖値の上昇には、糖質の摂取が大きく関わっている。インスリンが多く分泌されるのは糖質を摂ったとき。タンパク質や脂肪ではほとんどインスリンは分泌されないため、糖質を控えると、減った糖の代わりに、脂肪がエネルギーとして使われるようになる。だから、しっかりと食事をしてもやせやすくなっていくのだ。

「野菜→米、米→野菜という順で食べたときの血糖値を測ったものと、肉→米、魚→米、米→肉の順で食べたときの血糖値を測ったもの。この2つの研究結果が発表されていますが、どちらの研究でも、米を先に食べた場合の血糖値の上昇率が一番高いんです。また血糖値が上がらないといわれる低GIと高GI、低糖質と高糖質食品を組み合わせて4つに分類したときに、一番上昇率が低いのが、高GIまたは低GIと低糖質の組み合わせ。つまり血糖値を上げないためには、糖質は食事の最後に食べることと、量を控えることがベストだと考えています」(山田さん)

ちなみにご飯1膳(150g)に含まれる糖質は55g。角砂糖17個分に相当。また、糖質はご飯や麺以外にイモ類や大豆以外の豆類、お菓子、果物などにも多く含まれているので摂取の際は注意しよう。

山田 悟(やまだ・さとる)
医学博士/北里大学北里研究所病院糖尿病センター長。日本糖尿病学会学術評議員。日本臨床栄養学会学術評議員なども務める。2013年11月、一般社団法人 食・楽・健康協会を設立。ロカボライフ=ゆるやかな糖質制限を提唱。近著に『緩やかな糖質制限 ロカボで食べるとやせていく』(幻冬舎)、『dancyuダイエット実践ロカボライフ!』(プレジデント社)。