素晴らしい成績を上げるスーパースターはいらない
私は、こういう仕事を成功させるために、働きやすい職場でないと人がいてくれないから、そういう会社にしようと思っているだけです。そして、この1年で退職率も半分以下に下がりました。2016年、それをさらに半分にしようと思っています。
このような会社では、人の評価基準も変わってきます。いままでの会社では、「ほかの人ができないような難しい仕事ができる社員」を高く評価してきたでしょう。しかし当社では、チームワークをつくれる人を評価します。
すでに述べたように、住宅ローンの契約には複雑な手続きが必要です。分厚い書類の束があちこちの部署を行き来し、その説明図だけでも数センチの厚みがあるほどです。銀行法と貸金業法の厳しい決まりを守りながら、着実に進めていかなければいけない仕事ですから、そもそもスーパースター一人で片づけられる仕事ではないのです。
逆に言うと、同僚を蹴落としてでも素晴らしい成績を上げるスーパースターはいりません。 みんなが帰っているのに一人だけ残って仕事をして、人の何倍もの成果を上げる人もいりません。 なぜならそういう人がいると、周囲が、「やっぱりああいう人じゃないと出世できないのかしら」「あの人が残っていると、帰りづらいな」と思って、結局元に戻ってしまうからです。
私が理想としているのは、2015年のラグビーワールドカップの日本-南アフリカ戦で、最後の10分で日本チームが見せたような団結力です。絶対に球を落とすものかという執念で、パスをつないでつないで最後にトライしたからこそ強豪の南アフリカに勝てた。われわれの仕事も同じです。自分のエゴを前面に押し出すのではなくて、チームとして勝つことを第一優先にします。
もう一つ、私が変えたいと思っているのは、「管理職になったら勝ち組で、なれなかったら負け組」というような、日本の変な出世競争をなくすこと。将来的にはキャリアコースも、スペシャリストコースとマネジメントコースに分けていこうと思っています。途中で自分の向き不向きに気づいたり、家庭の事情などで働き方を変えたいと思ったら、コースを変えても構わない。このように働き方を変えていくことで、会社も社員も、お互いがハッピーになれるのではないでしょうか。
▼浜田宏社長の5大改革
1. 99歳定年制
顧客のために末永いサービスを
2. 出世競争をなくす
スぺシャリストコースとマネジメントコースを行き来できるように
3. 仕事の見える化
いつでも誰でも仕事が回せるように
4. チームとして勝つ
スーパースターは不要
5. 思い切った時短
11時半出社、3時半退社でもOK
東京都出身。早稲田大学卒業後、山下新日本汽船(現・商船三井)、アリコ・ジャパン(現・メットライフ)を経て、サンダーバード国際経営大学院でMBAを取得。デルコンピュータ(現・デル)に入社し、日本法人社長、米国本社副社長などを務める。その後、リヴァンプ代表パートナー、HOYAのCOOを経て2015年5月より現職。
長山清子=構成 岡村隆広=撮影