全社、店舗へ働きかけるCRMの力

安藤彩子(あんどう・あやこ)さん。株式会社ユナイテッドアローズ 事業支援本部 デジタルマーケティング部CRMチーム リーダー。大学卒業後化粧品メーカーへ就職、その後トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社へ転職し、SPA事業の店舗運営・販売促進を経てCRMに従事、システムリプレイス・サービス刷新の一員としてグローバル社内表彰の“Coustomer Orientation”部門で優秀賞受賞。2013年株式会社ユナイテッドアローズ入社。CRM戦略・戦術プランニング、事業部向け顧客化コンサルティングなどを行っている。現在社内のCRM刷新プロジェクトおよびEC&CRM統合プロジェクトに参画。

【安藤】当社は1999年、日本ではお店で接客しながら洋服を販売することが主流の時代から始まっているので、店舗に対する思い入れが非常に強いです。一方で、これだけネットやスマートフォンが普及する中で、お客様からは便利さも求められていますので、オンラインストアのサービスも充実させています。小売業界では、オンラインから店舗へ、店舗からオンラインへ「送客する」という言い方をすることがありますが、私はあまり好きではありません。お客様に、さまざまな選択肢を提供し、それぞれに合ったブランドやお買い物の方法を選んでいただきたいと考えています。

【原田】なるほど。言葉の選び方から意識付けをしているのですね。他にもCRMの担当者として、気を付けていることはありますか?

【安藤】店舗であれオンラインであれ、もちろんお客様にはまず商品を気に入っていただき、さらにたくさん購入していただきたいと考えていますが、「たくさん買う」というのはどういうことなのか、全員が目線を合わせなくてはならないと思っています。同じ「たくさん買う」でも、例えば1回に100万円買っていただくのと、10万円を10回買っていただくのと、どちらがいいのか? 同じ価値なのか、違うのか。そこの目線を、社内の他部署とも合わせようと努力していますが、なかなか難しいです。

私たちCRMでは、同じ売り上げでも、買っていただく回数が多い方がいいと思っています。データを分析してみると、少額でも複数回購入の履歴があるお客様の方が、長く私たちとお付き合いをしてくださっているのがデータ上の結果で分かるからです。こうしたデータを活用しながら、長期にご来店いただくことを目指そうと、働きかけています。

【原田】とはいえ、世の中に「客単価」という言葉があるように、関係性の評価の仕方は組織機能ごとにさまざまです。社内の他部署のみなさんと目線を合わせるのは大変だと思いますが、どうやって推進するのですか?

【安藤】「現状を変えよう」という話は、「会社の外で何が起きているのか」という比較対象がないと判断できません。ですので、視線を外に向けてもらえるよう、「今、市場はこんな状態です」「他社はこんなことをやっています」という情報を提示した上で、「当社は何を目指しましょうか」というトーンで話をしています。