テクノロジーの進化により、今までになかった「新しい仕事」が生まれています。この連載では、リクルートライフスタイルのアナリストであり、データサイエンティストとして活躍する原田博植さんを聞き手に迎え、新しい仕事の領域を切り開くフロントランナーにインタビューを行います。
今回は人気セレクトショップを多数展開する株式会社ユナイテッドアローズ(以下、ユナイテッドアローズ)で、CRMをリードする安藤彩子さんに、専門分野との出会いと覚悟についてお話を聞きました。
もっとCRMに取り組みたくて転職
【リクルートライフスタイル 原田博植さん(以下、原田)】安藤さんは、なぜユナイテッドアローズに入社したのですか?
【ユナイテッドアローズ 安藤彩子さん(以下、安藤)】Webなどのデジタルデータを活用しながら、お客様との関係性を構築するCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の分野で、さまざまなチャレンジができるのではないかと考えたからです。前職の衣料品メーカーでもCRMを担当していたのですが、もっとCRMに取り組みたくて転職しました。ユナイテッドアローズは、お店もよく利用していましたし、社是である「店はお客様のためにある」にも共感していました。それに、オンラインとリアルの店舗(オフライン)の連携(O2O)で先進的な企業ということで、よくメディアにも取り上げられていて、前職でベンチマークしていた会社だったのです。
【原田】ユナイテッドアローズという会社は、ユナイテッドアローズ、ビューティ&ユース ユナイテッドアローズの他にもアナザーエディション、ドゥロワーなど、複数のストアブランド(以下、ブランド)を展開しています。そうした場合は通常、CRMを活用することにより、年齢に応じて単価の高いブランドへのステップアップを促したりしますね。
【安藤】確かに、他のアパレルメーカー様ではよく行われています。でも、当社は、そういった考え方とは少し異なります。気に入られた1つのブランドと長期的にお付き合いいただきたいという思いを基礎に持ったブランドが多いです。それと同時に、当社の多種多様なブランドやお店の存在をご紹介した上で、最終的に選ぶのはお客様ですから、実際のところ、特に若い人向けのブランドでは、ある程度の年齢になると、そのブランドを“卒業”されてしまうことがあります。ですので、その卒業理由に適時に応えられる、お客様にふさわしいブランドをご紹介できるといいと思います。データを分析してみると、年齢に応じてお客様が卒業するブランド、卒業しないブランドがあることが分かりました。
【原田】そういったことが分かるのが、データ分析の強みですね。人の心の動きをくみ取って解決策を示すことができるのが、分析の良さです。
【安藤】そうなんです。私はすべてのブランドを横断してCRMを担当しているので、どのブランドであっても、会社としてどうしたら長くお客様とお付き合いすることができるかを考えています。
私が入社したのは2013年の8月1日なのですが、くしくも今年、2016年8月1日に、会員サービスのリニューアルを実施します。これまでは、お店での会員サービスと、オンラインでの会員サービスが分かれていたのですが、両者を統合するのです。私たちは、「顔と名前がわかるお客様を増やす」ことをサービスの目標に掲げています。ですので、この統合によって、店舗でもオンラインでも、お客様の顔と名前が分かっているような、きめ細かいサービスをシームレスに提供することを目指しています。ポイントカードの仕組みも変わります。これまでは、一定数のポイントをためていただいた場合は、ギフトカードをご自宅に郵送するというものでした。今後は、1ポイントからでも気軽に利用することができ、お客様の多様な購買スタイルに対応します。