つらいときは踏ん張って乗り越えるからこその未来

前のめりに仕事に取り組む遠藤さんにも会社を辞めようと思ったことが3回ほどあったそう。

「1度目は、チームで取り組んでいた仕事に失敗したとき。会議の席で謝罪を求められたんです。でも、個人プレーで失敗したのではなく、あくまでも上司の判断のもとでの失敗。失敗は失敗なので謝るのは当然ですが、それならば上司も一緒に謝るべきだと、辞職覚悟でお偉方の前で要求を突っぱねたんです。そうしたら、社長が『確かにそうだ』と私の主張を理解してくれて、チームで謝罪して幕引きに。

2度目も仕事の失敗。このときは私個人の失敗だったので、かなりへこみ、社長に『仕事を続ける自信がない』と伝えると、『聞かなかったことにする』とのひと言で終了。

3度目は、仕事が乗りに乗っていた時期、突然、周りの人間が私を無視するようになったんです。社長に目をかけられていたこともあり、同僚からねたまれていたのかもしれません。でも、こんなことで辞めるのは悔しいじゃないですか。どうせ辞めるなら、引き留められる状況で辞めたい。その後、外野を無視して目の前の仕事に集中していたら、誰も何も言わなくなりました。

これはひとつの考え方ですが、転職しても同じようなことはあります。つらいことがあって『もう無理!』と思っても、そこでがんばれなかったらほかでも同じ結果になるでしょう。やっぱり、根性は必要。私には根性があったから、今の地位を得ることができたんだと思います。学歴だって、性差だって、コンプレックスだと考える必要はないし、たとえコンプレックスだとしても、今更変えようがないことで悩んでも仕方がありません。今、目の前にある仕事を一生懸命やっていれば、会社や上司はちゃんと評価してくれます。そして、今を楽しむこと。そうすれば、結果はおのずとついてくるんじゃないでしょうか」

●学歴・性差を超えて、役員になるための資質とは?
・どんなことにも一生懸命取り組む
・根性がある
・外野のヤジを気にしない
・反骨精神がある
・仕事を楽しむ
・あらゆることに興味を持つ

共通するのは、パワフルで気骨あふれる女性であること。そして、出世を望んで仕事に取り組んできたのではなく、目の前の課題にまじめに取り組んできたからこそ、今があるということ。それは受け身の姿勢ではなく、向上心を持って自己研さんを積み、コツコツ丁寧な仕事ぶりが出世の要因に。学歴や性差という問題が出世の妨げにならなかったのは、単純にその実力故といえる。

■遠藤さんの経歴

(1956年)北海道虻田郡倶知安町で生まれる
(18歳)神奈川県の高校を卒業/製菓会社へ事務職として入社
(20歳)結婚を機に退職
(21歳)離婚後、パートで経理業務に携わる
(23歳)ナックへ事務職として正社員入社
(26歳)新支店の指導・教育係を任される
(28歳)副長就任
(36歳)課長就任
(39歳)事務長就任
(45歳)執行役員レンタル事業部/事務長就任
(49歳)取締役レンタル事業部事務長就任
(54歳)取締役経理部経理会計室長就任
(55歳)常勤監査役就任/現在に至る

撮影=大槻純一