女性はすでに十分すぎるほど活躍している
女性活躍という文脈をこの3年間、安倍政権がリードしてきたのは確かです。しかしなぜ「一億総活躍」となったのか?
女性だけに「働け」「意識を変えて管理職を目指せ」と言っても、すでに日本女性は活躍しすぎるほど活躍している。
男女局の会議で千葉大の大石亜希子先生が提出した資料には、
・「日本の現役世代の女性の有償労働時間は平均で178分/日、フランス男性(173分/日)より長く働いている」
・「日本の女性の睡眠時間は韓国と並んで短い」
・「日本は男女合計の有償労働時間が突出して長い(553分、北欧諸国は400分台)→時間あたり生産性が低い」
と指摘されていました(http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/jyuuten_houshin/sidai/pdf/jyu02-2-2.pdf)。
女性は仕事に、家庭に活躍している。これ以上は「男女ともに働き方を変える」「男性も家庭に参画する」ことでしか、現状は変わらないのです。
最初は違和感があった「一億総活躍」という言葉ですが、保守的な層にも「一億総活躍ですから」と言えば、「女性が働くことへの説明」がいらなくなりました。ある種の層に訴えるときに、便利に使えるキラーワードとして、使ってほしいと思います。
長時間労働については、6月17日にまた緊急フォーラムを行い、さらに「36協定の時間外労働規定の再検討」を加速し、欧州なみの「インターバル規制」などの法改正に向けて、進んでいきたいと思います。
みなさまには、今後、このプランがどのように具体化していくのかを、しっかり見届けていただきたいと思います。
「働き方改革は難しい。やってみて難しいとわかるとすぐに引っ込めるのではないか?」とある人に言われました。もちろん、そういった危険性もあると思います。
しかしこの3年間の「女性活躍推進」も、やればやるほど「本気度が増していった」感じがします。なぜかといえば、やれば「国際的に評価」されるからです。
政府の本気を後押しするには、評価や後押しする世論が必要です。多くの人の間で「36協定」や「インターバル規制」という単語が、「育休」や「保活」と同じぐらい出てくるようになることが当面の目標です。
もっとできることがあるとは思いながら、駆け抜けた8カ月でした。ご協力くださったみなさま、応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました。
以下がニッポン一億総活躍プランの「長時間労働」についての部分です。
長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっている。戦後の高度経済成長期以来浸透してきた「睡眠時間が少ないことを自慢し、超多忙なことが生産的だ」といった価値観が、この3年間で変わり始めている。長時間労働の是正は、労働の質を高めることにより、多様なライフスタイルを可能にし、ひいては生産性の向上につながる。今こそ、長時間労働の是正に向けて背中を押していくことが重要である。週49時間以上働いている労働者の割合は、欧州諸国では1割であるが、我が国では2割となっている。このため、法規制の執行を強化する。長時間労働の背景として、親事業者の下請代金法・独占禁止法 違反が疑われる場合に、中小企業庁や公正取引委員会に通報する制度を構築し、下請などの取引条件にも踏み込んで長時間労働を是正する仕組みを構築する。さらに、労働基準法については、労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる36(サブロク)協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する。時間外労働時間について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す。あわせて、テレワークを推進するとともに、若者の長時間労働の是正を目指し、女性活躍推進法、次世代育成支援対策推進法 等の見直しを進める。
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。講演、テレビ出演多数。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。1億総活躍会議民間議員。著書に『女子と就活』(中公新書ラクレ)、共著に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(講談社+α新書)など。最新刊1月5日発売『専業主夫になりたい男たち』(ポプラ新書)。