“ヨクミエルヒトハヨクミエル”という呪文の意味は?
私自身の著書などにも何度か書いているので、ご存じの方もいるかもしれませんが“ヨクミエルヒトハヨクミエル”という呪文を、ぜひ覚えておいてください。人を評価した経験があれば、このことに気が付いているはずです。よく分からない人の評価は難しいと。
そう、知っている人については細かく評価できるけれども、よく知らない人は曖昧な評価しかできない、という当たり前のことです。しかも、曖昧な評価の多くはプラスともマイナスともつかないような評価、人によっては若干ネガティブな評価にとどめておくのが、評価者として心理的にも楽なので(経験のある人はよく分かると思います)そうしてしまいがちなものです。ある程度仕事ができるにもかかわらず結果として評価が低いという人は、周囲に自らの存在を知られていない、もしくはどんな仕事をやっているのかあまり理解されていない、というタイプが多いのです。
それを防ぐためには、まず自らを“よく見える”ポジションに置くことから始めてください。遠慮は無用。例えば、周囲に取り組んでいる仕事の話をする。自慢話をしろと言っているわけではありません。例えば、上司や同僚に上手に相談を持ちかけて、そのアドバイスを受けることも、実は立派なプレゼンテーションのテクニック。声高に叫ぶのではなく、日々の仕組みの中で、自らの存在感をアピールするポイントはたくさん転がっています。その機会を積極的に活用すべきなのです。
「自分はアピールするタイプじゃない」という人もいるでしょう。しかし、そうやってぼやく人の多くは、周囲から見たら、何をしているのかイマイチよく分からない、存在感の薄い、あまり役に立っているとは思えない(知らない人なので当然そういう評価になりがちです)人として扱われ、いつまで経っても、価値が組織の中で認められないということになってしまうのです。
評価者として、部下の見えない部分を見る努力を
一方で、プレジデントウーマンオンラインの読者には、管理職として評価する立場にいる人も多いと思います。その場合はまず、自分はあまりよく部下のことが見えていないのだ、という自覚をすることから始めましょう。そして、部下の良さを見つけ出すために、自らが“見通しのよい場所”に移動する努力をしてみてください。
相手の良さを引き出すことは骨が折れます。しかし、部下のコミュニケーションスキルやプレゼンテーションテクニックに頼ってばかりの上司では、先が思いやられます。部下をハッキリと見える場所に移動して、良く見てあげることは、これからの上司の必須能力になるはずですから。
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。