行政の関与が事故を減らす
保育施設の中での事故というのは、密室の中で起こり、その場にいた人しか事実を知らないため、原因がうやむやにされることも多かったと思います。しかし近年、再発防止を願う遺族の方々の身を削るような努力によって、事実を検証する機運が生まれてきました。昨年から、認可の保育施設には事故報告が義務づけられ、再発防止のための情報共有が始まっています(認可外保育施設には報告義務がない点が課題ですが)。
4月18日、昨年の事故件数が発表され、死亡事故は14件でした。施設の種類別の件数を1万施設当たりの数に換算して比較すると、認可保育所0.85人、認定こども園5.18人、認可外保育施設6.28人、(内訳:認証保育所などの地方単独事業3.04人、届け出施設7.12人)となりました。行政の関与が強い制度下の施設ほど数字が小さくなっています(実際には、認可保育所のほうが1施設当たりの人数が多いので発生率にすると差は広がる。また、認可外保育施設の件数はもっと多い可能性もある)。
認可外保育施設にも、行政がもっと関与し、指導や支援をすることが事故を減らすことにつながると思います。
保護者がリスクを関知する方法
待機児童問題が深刻な地域では、行政の関与が薄い認可外保育施設(届出施設)も「保活」の対象になっています。保育施設は必ず見学して選びましょう。見学のときのポイントは、保育園を考える親の会でも紹介していますが(http://www.eqg.org/oyanokai/hoikukiso_checkpoint.html)、特に、
(1)「うつぶせ寝」についての考え方は必ず聞きましょう。事故を起こした保育者が「うつぶせ寝させちゃいけないなんて知らなかった!」と言ったという話もあります。
(2)保育者は保育士(有資格者)かどうか、朝夕の保育体制はどうなっているかなどを聞いてみます。答えを聞いても十分かどうか判断は難しいと思いますが、施設の考え方はわかるでしょう。
(3)保育者がゆとりをもって保育をしているか、子どもはだっこしたり優しく話しかけられたりしているか、ベビーサークルなどに入れっぱなしになっていないか、など保育のようすを見ることは大切です。
(4)0・1歳で寝ている子どもがいたら、保育士が顔色などを目配りできる状態になっているかもチェックしてください。
(5)施設長や保育者と目と目を合わせて会話し、信頼できる人物かどうかという直感的な判断をすることも大切です。
預け始めの事故が多いので、慣らし保育(慣れ保育ともいう)はていねいにやったほうがいいでしょう。
信頼できる保育施設と出会えたら、仕事に復帰できるだけでなく、子育ても強力に支えられます。こわいことばかり書いてきましたが、認可・認可外とも、子どものために頑張っている施設はたくさんあります。希望をもって探してください。
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』『共働き子育てを成功させる5つの鉄則』(ともに集英社)、保育園を考える親の会編で『働くママ&パパの子育て110の知恵』(医学通信社)、『はじめての保育園』(主婦と生活社)、『「小1のカベ」に勝つ』(実務教育出版)ほか多数。