たった3%の値引きで営業利益が10%以上減る!?

あなたは取引先に見積書を提示しました。その金額は1億800万円。取引先からは、「端数を切り捨ててもらえませんか? 1億500万円にしてくれたら購入します」との申し出がありました。300万円の値引き、あなたは受けますか? この案件にかかっている費用総額は8640万円とします。

値引き率としては、300万円÷1億800万円=約2.7%。3%未満ですし、取引が成立すれば1億円を超える売上です。今期の売上目標も達成できます。この条件で、取引を決めるべきでしょうか。

それでは、前の問題と同様、営業利益額を計算してみましょう。見積書の金額で取引が成立した場合、営業利益は、1億800万円-8640万円=2160万円。取引先の求める条件で取引が成立した場合、営業利益は、1億500万円-8640万円=1860万円。利益額の変化率は、(2160万円-1860万円)÷2160万円×100=約13.9%。300万円だけ、約2.7%だけの値引きですが、利益額は約13.9%も下がってしまいます。

企業の平均営業利益率は4%未満

そもそも、企業の営業利益率とは、いったいどのくらいなのでしょうか。 財務省が出している「法人企業統計調査結果(平成26年度)」によると、全産業の平均売上高営業利益率は2014年で3.7%しかありません。

では、この平均売上高営業利益率に近い、利益率が4%の会社があったとしましょう。売上は1億円、経費は9600万円、営業利益は400万円とします。この会社が3%の値引きをしたとすると、売上9700万円、経費9600万円、営業利益100万円となり、営業利益額は値引き前の4分の1に減ってしまいます。

このように平均的な営業利益を出している企業では、たった3%程度の値引きで、利益額の4分の3が吹き飛んでしまうのです。営業担当者が全員、「受注のためなら3%くらい……」と、値引きをするとどうなるか。安易な値引きは会社の利益を食いつぶす危険なものなのです。

問題として挙げたこれまでの例では、「仕入原価は変わらない」という前提で話を進めました。実際には、例えば小売業の場合、販売数量が増えれば仕入れ量も増え、その分、仕入れ価格を下げられるというケースがあるかもしれません。

しかし、資金力が脆弱な企業、あるいは設立間もない企業は、交渉力が弱いことが多く、また値下げ交渉を行えるほどの大きな数で発注を行えることはそれほど多くないため、仕入単価を下げることは難しいものです。ということは、値引きによるマイナスの影響をもろに受けことになるのです。