なぜ「愛子天皇」が待望されているのか。皇室史に詳しい島田裕巳さんは「女性天皇や女系天皇について多くの国民が関心を持つのは、愛子内親王が天皇の直系であるばかりでなく、独特のカリスマ性を持つからではないだろうか」という――。

※本稿は、島田裕巳『日本人にとって皇室とは何か』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

悠仁親王しかいない実質的な皇位継承資格者

現状において皇位継承の資格を有するのは、皇嗣の秋篠宮、その息子である悠仁親王、そして、上皇の弟である常陸宮しかいない。常陸宮は2025年3月の段階で、すでに89歳と高齢であり、将来において天皇に即位する可能性は限りなくゼロに近い。

現在の天皇と秋篠宮は5歳しか離れておらず、現天皇が上皇のように高齢で譲位し、秋篠宮が次の天皇として即位しても、その在位期間はそれほど長くはないはずだ。その点では、悠仁親王しか、実質的な皇位継承資格者はいないことになる。

男性の皇族自体、皇位継承資格者の3人と現在の天皇と上皇を含め5人しかいなくなってしまった。昭和天皇には秩父宮、高松宮、三笠宮と三人の弟がいたが、秩父宮と高松宮には子どもが生まれなかった。三笠宮には、2人の内親王のほか、3人の親王が生まれたものの、その3人はすでに亡くなっている。うち2人の親王は結婚し、子どもをもうけたが、男子は生まれなかった。次に、新たに男性の皇族が誕生するとしたら、悠仁親王が結婚し、男子をもうけたときである。

「万世一系」が招いた皇位継承の危機

果たして悠仁親王と結婚する女性は現れるのだろうか。それはかなりハードルが高いことなのではないか。民間から嫁いだ雅子皇后が、精神的に長く苦しんできたという事実もある。天皇になる皇族と結婚することには重大な決断を要するし、家族や親族は、それを簡単には許さないだろう。

しかも、「小室さん」をめぐる騒動があった。皇室とかかわれば、どれだけの誹謗中傷を受けるかわからない。そう簡単に、悠仁親王の結婚相手が現れるとも思えない。結婚がかなったとしても、そこに男子が生まれるという保証はまったくないのである。

皇位継承が危ぶまれる事態が訪れるのは、ある意味必然的なことである。というのも、近代の日本社会はその方向に動いてきたからである。最初は、岩倉具視が「万世一系」というとらえ方を打ち出したことに原因がある。

それをもとに、大日本帝国憲法と同時に1889(明治22)年に制定された旧皇室典範では、男子しか天皇になれないと定められた。それより前には、皇室典範にあたるようなものは長く存在しなかった。皇位継承を定める法的なものは、飛鳥時代以降存在しなかったのだ。

上皇ご夫妻への新年のあいさつのため、仙洞御所に入られる天皇、皇后両陛下の長女愛子さま
写真=共同通信社
上皇ご夫妻への新年のあいさつのため、仙洞御所に入られる天皇、皇后両陛下の長女愛子さま〔=2025年1月1日午後、東京・元赤坂(代表撮影)〕
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