会社の利益を上げるための近道

商売において「相手を喜ばせる」といえば、「割引」「無料」などを思い浮かべがちですが、果たして、そうしたことが相手を喜ばせているでしょうか。

例えば、私が実際にコンサルティングを行うとある企業では、見落とされがちなオプションサービスの利用促進に工夫を凝らすことで、顧客1人あたりが使う金額(客単価)を上げることに力を入れています。季節により来店者数が減るようなことがあっても、売上を増やしているのです。価格は高くなりますが、買い手は有益なオプションサービスが利用できるため喜んで支払いを行い、売り手も利益が増えるという、両者がうれしい状態を生み出しています。

割引や無料に踏み切れば、当然、サービス提供側ができることに制限が出てきます。ですので、値引きの誘惑に甘えず、想像力を働かせ続けることが必要となるのです。どうすれば製品やサービスの価値を伝えられ、理解、納得の上で財布の口を開いてもらえるのか。どうすればファンになって使い続けてもらえるのか。どのように顧客の役に立てているのか……、それらは会社、製品、サービスごとに異なることであり、想像力を働かせることによってきめ細かく把握し、丁寧に実行していくことにより、活路が開けるのです。

単なる値上げでは、顧客にそっぽを向かれ、もともとあった売上を損なうことにもなりかねません。安易な値引きはもちろん、安易な値上げもダメ。ですので、会社の利益を上げられる価格設定をするためには、経営に関わる基礎数値を理解し、顧客や取引先についてとことん想像力を働かせながら、「ここ!」というポイントを探っていくというのが、王道にして近道なのです。

このように、本連載「会社を楽しくサバイブするための会計財務[超]基本講座」では、「損益分岐点売上高」などさまざまな“会社を経営の視点から見るために必要なポイント”をお伝えしてきました。こうしたツールを使いながら、毎日の業務に主体的に取り組んでみてください。仕事に対するあなたの視座は、どんどん上がっていくはずです。今回で連載は最終回となります。ありがとうございました。

小紫恵美子(こむらさき・えみこ)
株式会社チャレンジ&グロー代表取締役、経営コンサルタント事務所Office COM代表。2児の母。東京大学経済学部卒業後、大手通信会社にて主に法人営業に従事。1998年中小企業診断士取得後、のちに退職。10年間の“ブランク”を経て、独立開業。現在は企業研修講師や中小企業への経営支援、執筆活動を行う。企業研修では会計、ロジカルシンキング等ビジネススキルを伝えるとともに、女性経営者を中心に数値とロジックに基づいた経営の重要性を伝える自主セミナーを展開。最近は、これまでの実績と、自身の大企業勤務→専業主婦→子育てしながら独立開業、という経験を踏まえ、女性の働き方についての執筆や講演に力を入れている。「活き活きと働くオトナが増える社会」を目指して日々活動中。

 

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