職場での理不尽な経験は自分の糧に変えられる

本コラムでは、働き始めてある程度の年月がたっている方を読者として想定しています。その場合、上司がいる、そして、上司でもある、という中間管理職である人が少なくないでしょう。

そういう立場にあるからこそ、自らの持っている能力やスキルの多くは、いままでの経験から獲得できているはずだということに、もう気が付いているのではないでしょうか。

だからというのも変ですが、職場での理不尽な経験も、ある意味で糧に変えることができるようになっている、と思うのです。年下の上司との付き合いの中でも、得るものは少なくないでしょう。

「自分なら、そんなふうには言わないな」「そういうやり方はするべきじゃないな」と、その立場に自らを置いたと仮定して、だったらどのようなやり方をするのか、どういうふうに言うのかを、頭の中で考えながら常に過ごす。

それが意識しないでできるようになるまで、徹底してみてください。そうすると、相手に対して愚痴っている暇などなくなってしまうでしょう。

納得がいかない人ほど「現状の環境から得られるものはないか?」という視点が大切

まずい仕事の進め方をしている上司を見て、自分なりの解決策を考えてみることで、自分の能力を高めることができると同時に、不足している能力に気付かされるはずです。足りないことが分かれば、その不足分を補うために、本を読んだり、別の上司の仕事ぶりを観察したりして、できることを少しずつ自分の頭の引き出しの中にためていく、そんな行動も取れるでしょう。

新しい年度を迎えて、少しずつ落ち着いてきたこの時期。自分自身の異動や組織変更などで、すっきりしない状況に置かれている人もいるでしょう。しかし、転んでもただでは起きない、という決まり文句があるように、現状の与えられている環境から、得られるものは、すべて搾り取ってやるのだ、というくらいの意気込みが大切と、改めて考える良いタイミングでもあるはずです。

「なりたい自分になる」。言葉として書いてしまうと、とても陳腐な感じがしますが、なりたい自分、つまりは、未来の自分を作るのは、いまの自分。したたかに、そして、しなやかにビジネス社会を渡っていくための能力(あえて処世術とは言いたくありません)を、自らの手で開発してみる。そうすることで、未来の自分に感謝されるはずです。「あの時頑張ってくれたから、いまの私がいるんだよ」って。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。