同期や後輩の男性が、いつの間にやら自分の上司になっていた。上司が優秀ならともかく、能力に疑問がある場合は、モヤモヤした気持ちが残るもの。そんな気持ちを抱えたままでは業務に支障を来します。では、正しいやり過ごし方とは?

年下の上司と上手に「付き合えて」いますか?

歴史の浅い企業やネット界隈で元気のある企業などは、若くして経営者、もしくは役員、マネージャーになっているという人は珍しくありません。ですから「年下の上司と、あなたはうまく付き合えるか」という問題に言及されることは、以前より少なくなくなりました。とはいえ、世間一般の企業においては、歳の若い役職者はまだまだそれほど多いわけではありません。

さらに女性の場合、男性以上にこの「年下の上司とうまく付き合う」を求められる状況が多いのが現実。名付けるならば「追い抜かれ問題」です。

男女の区別が少なくなったといっても、ビジネス社会で女性が出世するのはなかなか骨が折れます。入社時は一緒の平社員だったはずの男性メンバーが、気がついたら役職者になっていて、結果として自分がその部下になるという状況も、まだまだ当たり前のようにある話。

同期ならまだしも、新入社員として世話を焼き、面倒を見てきたかわいい後輩が、気がついたら自分のマネジメントをすることになったという事態に遭遇すると、なんとも複雑な気持ちになってしまうのは、想像に難くありません。同性に差をつけられるならまだしも、会社の(暗黙の)仕組みとして男女の区別があって、その結果の格差、というケースだと辛いはずです。

「女性だから出世できない」とは言いたくありませんが、まだまだそんな風潮が残る会社があることも事実です。

「あれおれ詐欺」をうまくいなせるか?

元気が良くて勢いのある人なら「そんなことを考えていないで、自分だってどんどん出世すればいいのよー」という声が聞こえてきそうです。もちろん、そうなることが理想的。けれども、それがままならないという人もいるはずです。ましてや暗黙のルールとして、女性が出世しにくくなっている組織であれば、なおさら無力感が募ります。

そんな場合は、現状とうまく折り合いをつける、そう、賢く乗り切ることがベター。面倒だと思っても、年下の上司に付き合ってあげてください。

例えば、会議の席で、全て自分の手柄にしてしまう、そんな年下の上司の狼藉(ろうぜき)を目にしたことがあるという人はいませんか。企業に属して働くということは、ある種のチームプレイですから、本来「誰の手柄」というのはないはずなのに。腑に落ちないシーンの代表です。

また、自分が関わったプロジェクトについて、実際には「ちょっと関った」だけなのに、まるで「全てオレが取り仕切った」ように話を膨らませたり、華麗な人脈を吹聴したり……こういう姿を見ていると、滑稽に思えると同時に「なぜ自分はこんなヤツの部下になっているのか」と落ち込んでしまうこともあるかもしれません。

年下上司に限りませんが、就任したばかりの上司だと、いかに自分の地位を築くかで頭がいっぱい。チームの成果を全て自分のものにして「アレはオレがやった仕事」と、いわゆる「あれおれ詐欺」に近いことをしてでも、自分を大きく見せたいものです。成長した我が子を温かい目で見守るように接してあげましょう、と言いたいところですが、実際にはなかなか難しいですよね。

もちろんそんなことをしない年下上司もたくさんいますから、そんなストレスとは無縁、という人も多いでしょう。でも、「あれおれ詐欺」な年下上司が来てしまったら、事実上「我慢する」しか選択肢はないわけです。その場所でのルールが変わるか、違うルールが適用されている場所に自分が移動するかしない限り解決しない、それが現実です。

職場での理不尽な経験は自分の糧に変えられる

本コラムでは、働き始めてある程度の年月がたっている方を読者として想定しています。その場合、上司がいる、そして、上司でもある、という中間管理職である人が少なくないでしょう。

そういう立場にあるからこそ、自らの持っている能力やスキルの多くは、いままでの経験から獲得できているはずだということに、もう気が付いているのではないでしょうか。

だからというのも変ですが、職場での理不尽な経験も、ある意味で糧に変えることができるようになっている、と思うのです。年下の上司との付き合いの中でも、得るものは少なくないでしょう。

「自分なら、そんなふうには言わないな」「そういうやり方はするべきじゃないな」と、その立場に自らを置いたと仮定して、だったらどのようなやり方をするのか、どういうふうに言うのかを、頭の中で考えながら常に過ごす。

それが意識しないでできるようになるまで、徹底してみてください。そうすると、相手に対して愚痴っている暇などなくなってしまうでしょう。

納得がいかない人ほど「現状の環境から得られるものはないか?」という視点が大切

まずい仕事の進め方をしている上司を見て、自分なりの解決策を考えてみることで、自分の能力を高めることができると同時に、不足している能力に気付かされるはずです。足りないことが分かれば、その不足分を補うために、本を読んだり、別の上司の仕事ぶりを観察したりして、できることを少しずつ自分の頭の引き出しの中にためていく、そんな行動も取れるでしょう。

新しい年度を迎えて、少しずつ落ち着いてきたこの時期。自分自身の異動や組織変更などで、すっきりしない状況に置かれている人もいるでしょう。しかし、転んでもただでは起きない、という決まり文句があるように、現状の与えられている環境から、得られるものは、すべて搾り取ってやるのだ、というくらいの意気込みが大切と、改めて考える良いタイミングでもあるはずです。

「なりたい自分になる」。言葉として書いてしまうと、とても陳腐な感じがしますが、なりたい自分、つまりは、未来の自分を作るのは、いまの自分。したたかに、そして、しなやかにビジネス社会を渡っていくための能力(あえて処世術とは言いたくありません)を、自らの手で開発してみる。そうすることで、未来の自分に感謝されるはずです。「あの時頑張ってくれたから、いまの私がいるんだよ」って。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。