うまくいっても“満足しない”こと

こうして結果、成果に結びついたとしても、「私がやったからうまくいった」と満足して終わる人は秘書には不向きです。秘書はあくまでも黒子であり、上司のニーズに対し、100パーセント応えることができて当たり前だからです。そこには数字を上げるという醍醐味はありません。それを求めるなら、自分で積極的に前に出る営業職や現場が向いていると思いますし、それはそれで適材適所だと思います。

私の場合、仕事がうまくいっても、必ず、「このやり方で本当によかったか」「上司のニーズを100パーセント充足させることができたか」と、自分に問いかけ「検証」します。これを繰り返すことで、よりよい方法を発見し、高いレベルで上司のニーズに応え、自分も成長していく。仕事に取り組むときの「仮説・検証」の大切さを、私は鈴木のもとで学びました。

その際、一番大切なのが、謙虚であることです。謙虚でなければ、「もっといい方法はなかったか」と自ら問い直すことはできないからです。私が秘書という仕事を長く続けるなかで、献身的であることと並んで自分のポリシーとしてきたのは、謙虚な姿勢でした。

まわりに対して献身的であることで、多くの部署から信頼を得てネットワークを結び、情報を吸い上げる。それをもとに、上司に対し全身全霊、全神経を集中させて、仮説を立て、サポートし、結果を謙虚に検証し、次につなげていく。数字には表れなくても、昨日よりは今日、今日よりは明日へと少しでも成長し、会社のために貢献していたいという気持ちは強くあり、それが秘書としてのモチベーションの支えになっているように思います。

そして、もう一つ、秘書室長としては、仲間や部下が成長していく姿を見られることも大きな支えです。部下の育成にも全神経を使い、電話の対応一つでも、美しい日本語を使うよう厳しくチェックし、タイミングを逃さずその場で指摘します。

秘書の場合、言葉づかいは特に重要で、相手に合わせて話し方や伝え方を変えることも必要です。もし相手が急いでいるようであれば、その人のペースに合わせ、要点を手短に簡潔にお伝えする。結論から先に知るのを好む人もいれば、プロセスをじっくり知りたがる人もいて、相手を起点にして使い分けをしなければなりません。